【人生を諦めない】転んでも倒れても… 義足で目指す山頂 両足と右手失った男性の挑戦『every.特集』

【人生を諦めない】転んでも倒れても… 義足で目指す山頂 両足と右手失った男性の挑戦『every.特集』

【人生を諦めない】転んでも倒れても… 義足で目指す山頂 両足と右手失った男性の挑戦『every.特集』

二十歳の時、利き腕だった右腕と両足を失った山田千紘(ちひろ)さん、31歳。営業マンとして働き始めたばかりの頃。帰宅途中だった山田さんは、駅のホームから足をすべらせ転落、電車にひかれてしまった。

義足をつけて歩けるまで、1年半かかると言われたリハビリ。しかし、山田さんはわずか3か月で歩けるように…。人一倍、努力を重ねた結果だ。

現在は、都内で一人暮らしをしながら満員電車で通勤できるほどになった。山田さんは、「僕は手足3本ないけどそれ以外、みんなと変わらない。日々を楽しんでいけるような人になりたい」と話す。

去年、初めてスキューバダイビングを経験するなど、人生を楽しもうと様々なことにチャレンジしている山田さん。11月、大学生を前にした講演会で山田さんは新たな目標を宣言。「富士山に登山しようと思ってます」登山は未経験ながらも「自分の限界を決めたくない」と日本一の山、富士山に登ることを決めたという。

一般的な義足では、登山が難しいため、アイスランドに本社をもつ義足メーカーから「AI(=人工知能)」とモーターが搭載された最先端のものを借りて山に登る。この義足の価格はおよそ500万円。

本来、義足は、「日常生活を送る上で必要」なものと定められ、原則、購入費の9割が支給されるが、最先端の高価な義足は、“日常生活”では不要とされ申請が通らず、国内で手にするのは難しいといわれている。

山田さんも東京都のセンターに申請してきたが、支給されることはなかった。申請の担当者に言われたのは、「デスクワークだよね別にそんな歩かないよね」という言葉。「日常を勝手に決められちゃうところっていうのがすごくもどかしい」という山田さん。厚生労働省は限りある財源の中で「QOL(=生活の質)」まで保障するのは難しいとしている。

「障害があっても人生を楽しむことをあきらめたくない」という山田さんの思い。去年12月。富士登山に向け最初の練習の地に選んだのは、茨城県の筑波山だった。標高877メートル、およそ2.8キロの道のり。義足メーカーのスタッフらとともに、5時間かけて登る計画だ。

両手につえを携え一歩一歩進んでいくものの、最先端の義足は普段のものよりも重い。体力ははたしてもつのか…。スタートからおよそ3時間。気温5度にも関わらず、額には大量の汗が。

この時、行程の6割ほどを通過している予定だったが、実際は、3割くらい。登り始めてから5時間後。予定では登頂しているはずが、まだ道のりは半分過ぎ。

「なんでこんなに時間かかるんだ」いら立ちを隠せない山田さん。疲れでうまく足を運ぶことができず、本来の性能を発揮してくれない義足。転びながらも何度も立ち上がり進み続ける。

登山に挑む思いについて山田さんは、「僕の人生は、二十歳のあの日で終わっていたかもしれない。そこから今ある人生っていうのはいろんな人のおかげである人生だと思っている。だからこそ家でぐーたらしてる場合じゃない」

そして日没直前。出発から8時間近くたち、いよいよ頂上へ。体力の限界に達した山田さん。抱えられるようにして最後の石段を登っていく、ついに頂上へ。思うように登れなかった悔しさと感謝、こみ上げる思いが涙となってあふれ出す。

「『これが日常じゃない』って言われて選択肢をせばまれちゃうっていうのは本当に残念なこと。選択肢が広がらないと、この景色は見られない。」

さらにトレーニングを重ねるという山田さん。今年の夏には、富士山登頂を目指す。
(2023年1月25日放送「news every.」より)

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