【不動産トップに聞いてみた】三井不動産・菰田正信社長(2023年1月13日)
■“事実上の利上げ”不動産業界はほとんど影響を受けない
(Q.日銀による事実上の利上げをしたが不動産業界に与える影響)
日銀は「金融緩和の出口ではない」と言って、長期の上限を0.25%から0.5%にしたが、今住宅ローンを借りているお客様の9割近くが変動で借りてらっしゃるので、そういう意味では、長期金利が上がったという影響はほとんどないということ。ただこの先さらに短期の金利も上がってくるということになると影響が出る可能性がある。
■下がることはなくても横ばいになることを期待
(Q.物価高や資材高騰が続いているが、今年の見通しは?)
エコノミストとかいろんな方に伺うと、アメリカも含めてインフレは、この上半期中にピークをうって、下がることはなくても横ばい程度になるんじゃないかと風に言われているので、我々もそれに期待しているところ。ただ既に上がってしまった分は、企業の負担であったり、個人のご家庭の負担になっているので、その部分を取り返していけないといけない。そういう意味では賃上げは非常に大事。
■今の金融環境が変わらない限り、価格的には全然問題ない
(Q.東京都の不動産価格の高止まりしている点について、今年の見通しは?)
今売りに出ている価格とお客様の購買力を分析すると、ほぼほぼ無理をなされない段階のぎりぎりで買ってらっしゃるので、今の金融環境が変わらない限り、価格的には全然問題ないかなという風に思っているが、金融環境が変わるとちょっと割高感が出てくるのかなと思うので若干心配である。
■インバウンド回復願うも 中国観光客にはある程度制御を
(Q.今年のインバウンドの見通し)
2019年に比べると、まだ20~25%くらいの入国者だと思うが、海外のお客さんにとっては為替が円安だということもあり、本当に日本に来たいというお客さんが非常に多いので、徐々に増やしていって、できれば早い段階で2019年並みのインバウンド観光3200万人くらい来るようになればいいなと思う。
(Q.4日から中国が水際緩和する一方、日本は引き締めることについて)
他の国のインバウンド再開については我々非常に歓迎しているが、中国のインバウンドは全世界のなかでも非常に特殊な国になっている。他の国はワクチンだとか治療薬が普及して、ウイルスも弱毒化しているので、ほぼほぼ集団免疫に近い状態。ところが中国だけはゼロコロナできたので、集団免疫はもちろんないということと、長い間国を閉ざしていたので、どの型のウイルスが流行しているかと分からない状況なので、やっぱり違った種類のウイルスが入ってくると、せっかく集団免疫ができている日本についてもちょっと大きな感染拡大とかなると非常にまずいので、そういう意味では中国からのお客様については、ある程度制御した方がいいんじゃないのかなと私は思っている。
■20年間賃金上がらない日本 日本経済の再浮上には「賃上げ」必要
(Q.今年はどのような年にしたいか)
1つ目はコロナがだいぶ収束しますので、“ポストコロナ”ですね、ポストコロナといってもウイルスがいる状態で、ウイルスと共生しながらということになるかと思うんですけど、そういうポストコロナの街づくりをしていきたいなと思う。もう一つは日本経済を考えたときに、この20年間で賃金が全然上がってなかったということですね。その結果としてこの20年間ほとんど物価が上がっていない。アメリカは賃金が80%くらい上がって、物価も55%上がっていると。経済の好循環を作っていかないといけないと思う。そういう意味ではうち個社、1社でできることではないが賃上げのモメンタムっていうのを動かしていく必要があるなと思っていて、個社でも今年はちょっとしっかりとした賃上げをしたい。
(Q.日本経済の再浮上について)
日本経済が停滞しているのは賃金が上がらない、その結果国民の所得が上がらない、したがって企業物価、コストが上がってしまって、価格転嫁できないと、しょうがないからコストを下げにいく、人件費を上げるっていう悪循環になってるので、賃上げは一つの大きなきっかけになると思う。それで賃上げができると、国民所得が上がる、価格転嫁できる、そうすると企業収益が上がる、賃金を上げられると、こういう好循環を回して行くことが非常に大事。
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