「戦況を変えるのは難しい」ロシア30万人の予備役投入へ…戦況に影響は?専門家に聞く(2022年9月28日)

「戦況を変えるのは難しい」ロシア30万人の予備役投入へ…戦況に影響は?専門家に聞く(2022年9月28日)

「戦況を変えるのは難しい」ロシア30万人の予備役投入へ…戦況に影響は?専門家に聞く(2022年9月28日)

ロシアが占領しているルハンシク州・ドネツク州・ザポリージャ州・ヘルソン州で、ロシア編入を問う住民投票が行われました。

ロシア国営メディアが報じた結果はを見ると、“ロシア編入に賛成”を投じたのは、どの州も9割近くと非常に高い数字となっていますが、“結果ありき”の数字にも見えます。

この結果を受けて、プーチン大統領は30日に4州のロシア併合を発表するとみられています。

一方、プーチン大統領が『部分的な動員令』を発表したことを受け、ロシアでは、兵役を逃れるために隣国への国外脱出者が急増し、混乱が生じています。

部分的な動員令は戦況にどう影響を与えるのか。その効果は限定的という見方が出ています。

今回、プーチン大統領が発表した部分的な動員は、軍務経験がある人など、予備役が対象です。

日本の外務省によりますと、ロシア国内には約200万人の予備役がいるとみられていますが、対象は約30万人とされています。

ただ、対象はもっと広いのではないかという見方もあります。大統領令の中には非公開にされている第7項という部分があり、ロシアの独立系メディアはここに「100万人を徴兵できる」と書かれていると報じています。

イギリス国防省は「招集されたロシア軍兵士が基地に到着し始めた。兵士の多くは、何年も軍事経験がなく、前線に配属されるため、離隊率は高くなるだろう」と分析しています。

◆防衛省防衛研究所の高橋杉雄さんにお話を伺っていきます。

(Q.動員令はロシア国内にどんな影響を与えていると考えますか?)

多くのロシア人にとって、これまで他人事だった戦争、テレビの向こうの出来事だった戦争が、一気に自分事になったと。それに伴う不安が、広がっているのだと思います。

この不安の広がりは、恐らくプーチン大統領の予想以上だったと思います。

(Q.今回の動員令の狙いは何だとみていますか?)

9月上旬のウクライナによるハルキウ反抗で、かなり損害を出したので、これまでの損害と合わせて穴埋めをしていくための部分動員だと思います。

このことから1つ言えるのは、通常戦力で大敗を喫したわけですが、これに対して核兵器で劣勢を補おうとするのではなく、まずは通常戦力を補填することを選びました。逆に言えば、核兵器が使用される危険はある程度、遠のいたと言えると思います。

アメリカの専門家の指摘で非常に興味深いと思ったのは、予備役の大量召集が大きく能力を上げることはないだろうという見方です。

予備役は一度、軍について、辞めた人です。やりたければ契約兵・志願兵として残っているはずです。今、予備役として辞めているということは、軍に向いていないか、軍務につきたくない人です。

(Q.動員された兵士はどんな場所で、どんな任務を行うことになりますか?)

いくつか可能性はあります。

ショイグ国防相は「後方任務につける」と言っているので、もしそれが正しいとすれば、後方任務や国境警備につけて、そっちにいる志願兵・契約兵を前線に移すことが考えられます。

ただ、ありそうなのは、準備ができ次第、前線にバラバラと送っていく。ここの部隊で5人死んだから10人送るとか、ここで10人戦死者が出たから15人送るなど、散発的に前線に送る可能性が高いと感じます。

恐らく今、激戦が行われている東部のリマン周辺やルハンシク州北部、ドネツク州南部など激戦地に送られる可能性が高いと思います。

この戦争が始まってからのロシア軍のやり方を見ると、準備不足のまま戦線に送る可能性が高いように思います。

(Q.今回の動員で、戦況は大きく変わると思いますか?)

一般論として、予備役は現役兵に比べるとレベルが落ちます。ロシア軍の場合、特に下士官のレベルが低いと言われています。下士官のレベルが高いと、その下に一般兵士が入ってきても、ある程度のクオリティーは維持できますが、下士官のレベルが低いので、予備役部隊のレベルはかなり低いものになると予想されます。

30万人だとしても、ウクライナ軍のすでに導入されている兵力は70万人いるので、これまでの派遣兵力と合わせて6割くらいにしかなりません。

そう考えると、ゲームチェンジャーとはなかなかならないという考えがあります。

(Q.4州の併合が発表された場合、その州にいるウクライナ人が戦線に送られることは考えられますか?)

ロシア政府からすると、そこの住民はロシア人になるので、動員の対象として強制的に徴兵して、前線に送る可能性は高いと思います。

これまでのルハンシク州・ドネツク州での出来事をみると、最前線に送って、後ろから銃を突き付けて戦わせるといったことが考えられます。

(Q.プーチン大統領は、なぜそこまで無理をしてでもやるのでしょうか?)

そこまでしてでも劣勢をひっくり返したいのだと思います。

しかし、現状では能力は限られているので、これによって、ロシアが大きく戦況を変えることは難しいと思います。
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp/a>

ANNnewsCHカテゴリの最新記事