医師「人員は足りない」 介護士常駐“要介護高齢者”受け入れ『宿泊療養施設』の現状（2022年8月30日）
新型コロナウイルスの感染者急増の第７波。介護が必要な高齢者の「ホテル療養」の現状を医師に聞きました。
宿泊療養施設となっている大阪市淀川区のホテル。提供された映像では、防護服を身にまとい、コロナ患者の世話をする介護士がみられます。こちらでは一般の療養施設では受け入れが難しい“介護が必要な高齢の陽性者”に特化して受け入れています。施設には医師や看護師のほかに介護士が常駐。診療だけでなく食事や入浴の介助など２４時間体制で対応に当たります。施設には、２９室ありますが、満室に近い状態が続いているといいます。
（宿泊療養施設で診療を担当 岩崎寛医師）
「最初からずっと満床ですね。７月中に１０床から２０床にして、２０床から２９床運用にして、（８月）２９日からプラス１３床するので、４２床運用にする予定です。それでも全然追いつかないレベルかなと思いますね」
第６波のときに高齢者の感染が相次いだ大阪府。介護が必要な患者の受け入れ先の調整などが課題となりました。そのため府は、介護が必要な高齢者などに対応した宿泊施設を、現在、府内に２か所設置しています。
ある８０歳の男性は、入所の２日前にコロナの感染が判明しました。入所にあたって、いまの容体や既往歴、薬の服用状況などを医師がオンライン診察で聞き取ろうとした際には…。
【オンライン診察の様子】
（医師）「今の症状を教えていただきたいんですけど、おとといからコロナになっているのはご存じですか？」
（男性）「全然知らない。月曜日にね、月曜日にあの…診察」
（医師）「そうですね（診察）受けていらっしゃいますよね」
（男性）「受けることになっているんです」
（医師）「なっている？きょう何曜日かご存じです？」
（男性）「月曜日にね」
（医師）「きょう何曜日か覚えていらっしゃいます？」
（男性）「あのね、月曜日にね」
なかなか話が噛み合いません。今後の診療方針に関わるため、親族に連絡を取ります。
（医師）「ご本人さんを診察させていただいて、ちょっと認知症と難聴があるので薬の説明や今までのことを長男さんにお聞きしようと思ってお電話したのですが」
（男性の息子）「たぶん（本人は）理解できていないと思うんですよ。すいませんがよろしくお願いいたします」
“介護が必要な高齢者”の中には認知機能が低下した人なども多く、コロナの病状だけでなく、生活についての細かなケアも必要となります。入所依頼は増えていますが、人手が足りず対応しきれないのが現状です。
（宿泊療養施設で診療を担当 岩崎寛医師）
「診療内容が特殊なので、それぞれ（職種で）トレーニングが必要ですし、特に介護が必要な方、介護士さんに入ってもらって、看護師さんに健康観察をしてもらって、服薬管理をしてもらってとなると、かなり（人員は）足りないですね」
高齢の感染者の中にはコロナの症状自体は軽くても療養中に深刻な事態に陥る人もいるといいます。ある９０歳の女性は、コロナ発症後９日間、自宅療養を続けてきました。
（女性の診療を行うＫＩＳＡ２隊 小林正宜医師）
「酸素（濃度）自体は９５とそんなに悪くないんですけど、かなり息苦しそうにしていますね。ちょっと（胸の）音聞かせてくださいね。…音はきれい。肺炎はないですわ、なさそうです。向こう側に向けます？ゆっくりね…寝返りも難しい」
（医師）「いつももっと動いてはります？」
（親族）「動いてます。はい。トイレまでもちゃんと自分で行けてたけど、もう起き上がるということができなくなっていて」
女性はコロナ発症後、食事や水分の摂取が十分にできず、全身状態が悪化。入院して治療することとなりました。高齢の感染者が増えるいま、宿泊療養施設で高齢者の診療を担当する医師は、今後は「療養後」の対応も重要になってくると指摘します。
（宿泊療養施設で診療を担当 岩崎寛医師）
「普段、杖を使って歩いていた人が一時的に車いすを使うとか、車いすを使っていた人が筋力が落ちて寝たきりになってしまうとか、『コロナが治りました』じゃあ帰れます、同じ環境・同じサービスでいけます、とはすんなりならないと思う。ポストコロナのリハビリを受け入れる病院とか、介護システムをすぐに変える必要が出てくると思います」
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