【解説】核抑止力か核軍縮か…核兵器を取り巻く世界の現状と課題とは

【解説】核抑止力か核軍縮か…核兵器を取り巻く世界の現状と課題とは

【解説】核抑止力か核軍縮か…核兵器を取り巻く世界の現状と課題とは

核の脅威が高まる中、NPT再検討会議が閉幕を迎えます。核抑止力は効果があるのか、今回こそ最終文書は採択できるのか。核兵器をめぐる世界の現状と課題について、国際部・守下記者が解説します。

■まもなくNPT再検討会議が閉幕…何が話し合われているのか
現在、アメリカ・ニューヨークでNPT=核拡散防止条約の再検討会議が開かれていますが、まもなく閉幕を迎えます。ロシアによるウクライナ侵攻で核の脅威が高まり、「核による抑止力が必要だ」との声もあがる一方、「核軍縮をもっと進めるべきだ」との危機感も高く、核兵器のあり方に関心が高まる中での開催となりました。

今回の会議では、締約国が一致して核不拡散や核軍縮を目指すことができるのか、そして最終文書を採択することができるのかが、注目されています。

■そもそもNPT再検討会議とは
NPT=核拡散防止条約とは1970年に発効され、核兵器を持つ国を増やさないことを目的としています。条約ができた当時に核兵器を持っていたアメリカ、ソ連、イギリス、フランス、中国の5か国を核保有国として認め、その代わりに3つの柱が設けられました。

1.「核軍縮」への取り組みの義務づけ
2.核を持たない国に核兵器の製造や取得を禁止する「核不拡散」
3.そして原子力発電など「原子力の平和利用」を認めるというものです。
現在は191の国と地域が締約しています。締約国は5年に1度、会議を開き、核軍縮や核不拡散に向けどんな取り組みをしてきたかを振り返り、今後の方針を議論してきました。今回の会議は新型コロナによる延期を重ねたため、7年ぶり10回目の開催となりました。

■岸田総理大臣が日本の総理として初めてNPT再検討会議に
岸田総理は英語で演説し、核兵器廃絶に向けた日本の行動計画として「ヒロシマ・アクション・プラン」を打ち出しました。ただ、去年発効した核兵器禁止条約への言及はひと言もなく、唯一の被爆国として日本が核軍縮をリードするという姿勢も見られなかったとして被爆者などからは失望の声も聞かれました。

被爆者の荒木史子さんは「ヒロシマ・アクション・プランを述べたことには賛同する。被爆国であり、核の傘の下にいるという日本が矛盾した立場にいることも理解できるが、被爆国として、黙っていることは許されない」 とおっしゃっていました。

■進化する核兵器の種類…もう“爆弾”だけじゃない!?
核兵器は爆発を起こす方法によって、「原子爆弾」と「水素爆弾」に大きく分けられます。広島や長崎に落とされたのは原子爆弾で、その後、より威力が大きい水素爆弾の開発も進められています。また、これらの爆弾を運搬する手段もいろいろあります。初期の原子爆弾は、爆撃機に搭載して目的地上空まで行き、投下するしか方法がなかったのですが、いまはミサイルや魚雷などに「核弾頭」を搭載して遠隔地から敵を攻撃する技術が主流となっています。
具体的に言えば、北朝鮮がよくミサイルの発射実験をしていますが、あれはただのミサイルではなく、「核弾頭」を搭載すると核兵器になるんです。

また、写真の北朝鮮のミサイルはICBM=大陸間弾道ミサイルと呼ばれるもので、核弾頭を搭載し核兵器として使用されるおそれがあるだけでなく、アメリカ本土を直接狙うこともできると言われています。
ミサイルは飛ぶ距離=「射程」によっても種類が分かれており、ICBMのように射程5500キロ以上で敵の領土を直接攻撃できるものは「戦略核」、また、射程が短く戦場などで使われるものは「戦術核」などと呼ばれています。

■世界にある“核兵器”の数
各国が保有する核兵器の数は通常“核弾頭”の数でカウントされていて、ストックホルム国際平和研究所によると、今年1月現在、世界で合計12705発の核弾頭があると推定されています。アメリカとロシアだけで9割以上保有していることになります。
その一方で、核弾頭の数の推移は冷戦終結ごろを境に減少に転じています。
NPTなどの核軍縮の取り組みが功を奏している面もある一方で、今年は去年より核弾頭が395個減りましたが、これらは、古くなったものが解体されただけと言われています。また、NPT締約国であるイギリスは去年、保有する核弾頭の数の上限を引き上げることを決め、今後は保有数も公表しないと明言しました。さらに、NPTを締約していない北朝鮮など、核兵器の保有が疑われている国の実態は全くわかっていません。

ストックホルム国際平和研究所は「冷戦後、減少していた世界の核弾頭の数が今後、増加に転じるかもしれない」と警鐘を鳴らしています。

■進まない核軍縮…いったいなぜ?
NPT再検討会議にも参加している一橋大学の秋山信将教授は、「大国間の信頼関係が欠如していることが大きな要因だ」と指摘しています。
自分の国が核兵器を減らしたら相手も減らしてくれるという信頼関係がないと、核軍縮は進みませんが、いま核大国のロシアは核の使用をちらつかせていて、アメリカなど核保有国との間に信頼関係を築くのは難しい状況ですよね。

■まもなくNPT再検討会議閉幕…今回こそ最終文書はまとまるのか
秋山教授によると、やはり悲観的な見方が増えているそうなんです。ただ、秋山教授は「たとえ最終文書を採択できなかったとしても、核兵器保有国と非保有国が集まり、共通認識を醸成する場としてのNPTの価値を再認識すること、枠組みを維持していくこと自体も重要な意味がある」と強調しています。核軍縮をめぐる世界情勢は厳しさを増していますが、どんなに地道でも議論を放棄することなく、目標を掲げ行動し続ける、あきらめない粘り強さが大切です。
(2022年8月26日放送)

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