所在不明だった「広島大仏」原爆ドーム横への“里帰り”に密着|TBS NEWS DIG

所在不明だった「広島大仏」原爆ドーム横への“里帰り”に密着|TBS NEWS DIG

所在不明だった「広島大仏」原爆ドーム横への“里帰り”に密着|TBS NEWS DIG

NO WAR プロジェクト「つなぐ、つながる」です。

戦後、原爆ドームのそばで広島の復興を見守った大仏がありました。その後所在が分からなくなっていましたが、平和を願う人々の思いを受け、今年、その“里帰り”が実現することになりました。

奈良県安堵町の極楽寺。この寺には、あまり世に知られていない“大仏”があります。

極楽寺 田中全義住職
「こちらのお堂の仏様が広島大仏」

奈良に眠る「広島大仏」。数奇な運命をたどってきました。

鎌倉時代にいまの山形県でつくられたこの仏像は、明治の廃仏毀釈をまぬがれ、大正時代に広島へ。戦後“原爆の犠牲者を供養する仏様にしよう”という機運が高まり、原爆ドームのすぐそばに大仏殿が建立されました。「広島大仏」と称され、1950年から55年まで人々を見守ったのです。

その後、所有権をめぐる混乱の末、所在が不明に。再びその存在が明るみに出たのは半世紀以上も後のことでした。

極楽寺 田中全義住職
「ひょんなきっかけでと言うか、ある本、写真集を見てみると、その写真集に広島大仏さんが写っていらっしゃった」

広島大仏の写真に偶然出会った田中住職が、自分の寺にある仏像と同じではないかと感じ、調査。11年前に広島大仏であることを突き止めたのです。

その後、田中さんは“大仏を里帰りさせたい”という思いをあたためてきました。

極楽寺 田中全義住職
「私はどちらかと言うと、いまのこの日本を平和に導いた、第一歩を踏み出した人たちの思いを大切にしていかないといけないなと。“枯れた土に芽を植えた人たち”を私たちが忘れていては、きっと未来に平和はないんじゃないかなと」

そして今年ついに、広島の企業の協力も得て「里帰り」が実現することになりました。原爆ドーム横の複合施設「おりづるタワー」で7月から公開されることが決まったのです。

再び広島へ向かうことになった、大仏。傷が付かないように丁寧に“梱包”し…

「せーの、よいしょ!」

ゆっくりと横たわらせ、頭の部分と体の部分を分けていきます。

「もうちょい、もうちょい」
「思ったより重たいやん」

そして、大仏殿から運び出されていきました。

記者
「関係者に見守られながら、広島大仏がいま出発していきました。半世紀以上の空白を埋めて、広島へ“里帰り”に向かいます」

広島に到着した大仏は、深夜に「おりづるタワー」の12階に搬入され、無事に安置されました。

先月1日。大仏に魂を吹き込む法要が営まれました。

極楽寺 田中全義住職
「仰ぎ願わくは広島大仏の功徳によって、復興へと導かれた英霊たちの離苦得楽を称し、万邦協和、一つの和となり、世界平和へと導きたまえ」

8月6日。ある被爆者が広島大仏との再会を果たしました。梶本淑子さん、91歳です。

梶本淑子さん
「懐かしいですね、本当に。お久しぶりですね」

当時、大仏殿の近くにあった親戚の洋服店で働いていた梶本さん。何度も広島大仏に会いに行ったといいます。

梶本淑子さん
「(原爆投下の約1年半後に)亡くなった父にすごく似ている。お寺もない、お宮もない、神社も何もない時でしたから、心の支えのような。ここに来れば何か落ち着くとか、優しくなれるというのは、お父ちゃんに会いたいという気持ちが半分あったんじゃないかなと思ったりします」

再び被爆地の人々の心を照らす「広島大仏」。慰霊の旅は来月まで続きます。

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