【終戦から77年】「私たちはもう死んでいきます」減少する戦争体験者、遺跡に迫る危機…託された“記憶のバトン”

【終戦から77年】「私たちはもう死んでいきます」減少する戦争体験者、遺跡に迫る危機…託された“記憶のバトン”

【終戦から77年】「私たちはもう死んでいきます」減少する戦争体験者、遺跡に迫る危機…託された“記憶のバトン”

今年は終戦から77年、戦争体験者は年々減っています。戦争を伝えていこうとする現場では、いま何が起きているのでしょうか。

◆危機的状況にある資料や戦争遺跡 当時の“つらさ”追体験も…閉鎖相次ぐ

77年前の沖縄戦を伝える『沖縄県平和祈念資料館』。

仲程勝哉学芸員
「こちらが一般収蔵庫という、資料が保管されている場所になります」

この地下には、軍人が使った刀や靴、遺品など2万点以上の資料が保管されています。しかし、温度・湿度の変化や、外気に触れることだけでも劣化が進むため、保管や展示が難しいといいます。

戦争遺跡も危機的状況にあります。

看護要員として動員された女学生たちがいた“ガマ”と呼ばれる自然の洞窟。ここで仲間を亡くした元白梅学徒隊の中山きくさん(93)は、沖縄戦の平和学習ではガマに入り、その暗さや蒸し暑さ、閉塞(へいそく)感を実感し、当時のつらさを追体験していました。しかし近年、ガマも崩落の危険による閉鎖が相次いでいます。

中山きくさん
「私のような戦争のある人生を歩まないでほしい。だから私は、安全に整備して沖縄の戦跡地として残していきたい」

沖縄戦を研究する元沖縄国際大学の吉浜忍教授は、「戦争体験者が減少して、あと数年たったらゼロになる。それに代わるものとして、戦争遺跡があると思う」と指摘します。そして、資料や戦跡の保存が重要だとしたうえで、次世代の語り部の育成が大事だといいます。

◆戦争体験を“受け継ぐ”プロジェクト

こうした中、ある自治体で始まった“取り組み”が。

有馬佑介さん
「“ピカッ”と稲妻よりまぶしい光が襲ってきました。 慌てて両手で目を押さえたその瞬間、“ドーン”と…」

東京・国立市で広島の原爆の語り部をしている有馬佑介さんは現在、41歳。国立市では7年前、戦争体験を受け継ぐ「伝承者育成プロジェクト」を始めました。

有馬さんは、この春から、東京大空襲についても学んでいます。講師の二瓶治代さん(86)は、8歳の時に、およそ10万人が亡くなった東京大空襲を経験しました。

二瓶治代さん
「おんぶされた赤ちゃんが、お父さん、お母さんの背中で燃えてるんですね」

二瓶さんは、折り重なって焼け死んだ人々の中で気絶していたところを助けられましたが、幼馴染みを亡くしました。有馬さんは、二瓶さんの経験や思いを正確に聞き取ろうとする一方で、想像を絶する体験に胸が詰まります。

この日は、東京・江東区の『東京大空襲・戦災資料センター』で、落ちてきた爆弾の実物を見ながら話しました。

有馬佑介さん
「今の僕らの感覚だと、焼夷弾(しょういだん)で起きた火事を消すのは無理でしょと思うんですけど、当時はみなさん、消せると思ってたんですか?」

二瓶治代さん
「思っていました」

◆戦争体験者から、41歳に託された記憶のバトン

二瓶治代さん
「私たち戦争世代はもう死んでいきます。戦争とはどういうものかを、自分のものとして想像して感じ取っていただきたい」

二瓶さんから、41歳に託された記憶のバトン。

戦争体験伝承者 有馬佑介さん
「二瓶さんがあの日見たものを、もっともっと感じられるようにしていきたいと思います。僕たちはみんな平和を求めていると思っています。(戦争を考える)きっかけとか、知る機会がないんだと思うので、自分がきっかけになれたらうれしいです」
(2022年6月25日放送「news every.」より)

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