“白人至上主義”と銃撃の核心 グレート・リプレイスメントとは? #リアルアメリカ(2022年6月8日)

“白人至上主義”と銃撃の核心 グレート・リプレイスメントとは? #リアルアメリカ(2022年6月8日)

“白人至上主義”と銃撃の核心 グレート・リプレイスメントとは? #リアルアメリカ(2022年6月8日)

アメリカ側から見るナイアガラの滝。壮大な自然を感じることができます。
カナダとの国境沿いにあるこのニューヨーク州バファローで、街が震撼する事件が起きました。

猪ノ口克司朗報告)
「こちらのスーパーの駐車場で少なくとも4人の遺体が見つかりました。容疑者の男は警備員との銃撃戦の末に店内に押し入り、さらに客と従業員にライフルを向けて乱射したということです」

5月14日、スーパーマーケットで13人が銃で撃たれ、10人が死亡しました。
週末の午後に買い物に訪れていた人々の何気ない日常が突然、奪われたのです。
騒然とする現場に警察が駆けつけ、その場で、白人の男が身柄を拘束されました。

地元当局の会見)
「容疑者はニューヨーク州で最も重罪となる第一級殺人の疑いがもたれている。
この罪は仮釈放なく終身刑が科されるものだ」

男は当時、迷彩服と防弾チョッキを身に着けてライフルを乱射し、その様子をネットにライブ配信していたといいます。
殺人や国内テロなど25の罪で起訴されたペイトン・ゲンドロン被告、18歳。
無罪を主張しています。
去年夏には自身が通う高校に銃撃すると脅迫し、当局が介入しましたが、拘束を解かれていました。
その後、地元でライフルを入手するなどして、入念に準備を進めていたとみられています。
当局によると、ゲンドロン被告は逮捕後の調べに対し、こう供述していました。

ゲンドロン被告)
「黒人のコミュニティーを標的にした」

事件に巻き込まれた13人のうち11人が黒人でした。
この地区では、人口の8割近くを黒人が占めていてゲンドロン被告は、自宅から車で3時間ほどかけて1人でこの街を訪れていました。

記者)
「男は事件の前に黒人が非常に多く住むこの街を訪れ、数日間かけて下見をしていました。そのうえでスーパーに人が集まる週末の午後をあえて狙ったとみられています」

事件の前日、不審な動きをしていた被告に声をかけたという男性がいました。

事件前日にゲンドロン被告と会話した男性)
「誰かバファローに知り合いがいるのか聞くと『ノーノーノー、誰も知らないよって』。
どうやってここにきたの?と聞いたら彼は「GPS」と答えた。それから“天才”と書かれたシャツを着ていて『君は天才なの?』って聞いたら『そうだ』と言っていた」

自らを天才と称していたというゲンドロン被告。
黒人への憎悪を駆り立てたものとは何だったのでしょうか?
事件の2日前には、被告のものとみられる犯行声明がネットに投稿されていました。
180ページに上る文書には、動機を紐解く、別の事件の詳細が記されていたのです。

2019年にニュージーランドで起きた銃乱射事件です。
2つのモスクが襲撃され、51人が死亡しました。
この事件で、終身刑が科された男は、犯行の様子をSNSにライブ配信していたほか、
白人至上主義に傾倒していたことが明らかになっています。
この大量殺人事件を模倣した疑いがあるゲンドロン被告。犯行声明に綴られていたのは、
白人至上主義への陶酔ぶりだけでなく、
「グレート・リプレイスメント」と呼ばれる、白人としての危機感です。
一体どんなのものなのでしょうか?専門家は

白人至上主義に詳しいローゼンタール博士)
「グレート・リプレイスメント=置き換え理論というのは、北米とヨーロッパの両方で白人の人口が主に移民によって少数派に置き換えられるというものです」
「バファローの事件の男は18歳でした。彼はYouTubeで何かを見た可能性が非常に高い。グレート・リプレイスメントを暗示する動画や、または、より一般的に言うと民兵組織や極右が繰り返す問いかけです。アルゴリズムによって一度、動画を見ればYouTubeはそれらを提示するのです」
グレート・リプレイスメントとは、アメリカの人口の変化にともなう陰謀論だといいます。
白人の出生率が低下する中、リベラル派のエリートが
移民政策によってマイノリティを受け入れることで、有色人種が白人に取って代わり
多数派を占めようとしているという主張が広がっているのです。
メキシコの国境沿いには、アメリカへの入国を望む人々が数多く押しかけています。
不法に入国する人も後を絶たない中、移民の増加によって、アメリカ生まれの人々が
政治や経済、文化的な影響力をも失っていると懸念する人は6割近くに上っています。

人種の置き換えという陰謀論が渦巻く中で起きた銃乱射事件。
現場を訪れたバイデン大統領は

バイデン大統領)
「ここで起きたことははっきりしている。テロリズム、国内テロだ。白人至上主義は毒だ。毒なんだ。本当にそうだ」

人種的な動機に基づくヘイトクライムは、アメリカとは相いれない」と非難し、白人至上主義を許さない姿勢を強調しました。
人種や性別など多様性を重要視してきたバイデン氏を支持する黒人は65%に上っていますが、
その一方で白人の支持率は36%に留まっています。
そして、バイデン氏を支持しない白人至上主義者の中には、黒人を忌み嫌う過激派がいるのも現実です。

事件の翌日、バファローのスーパーの周りには、多くの黒人が集まっていました。
犠牲者を追悼するためです。中にはマイクを片手に声を上げる人もいて日本の事件現場とは様子が異なります。
住民にホットドックを配る男性もいました。
事件の直後に現場に居合わせたといいます。

スーパーで勤務する男性)
「私は銃撃のおよそ2分後にここにいた。駐車場に入って行ったら知人が倒れているのが見えた。皆が怖がっていた。皆が泣いていた。だが男が拘束されたのを知って友人の追悼を始めたんだ。こんな状況だ、すぐ癒されなければ辛いよ。本当に早く立ち直る努力をしないと」

犠牲になったのは罪のない市民です。
涙をこらえ、仲間と肩を寄せ合うことで、命をも奪う、人種差別の闇と恐怖から何とか立ち直ろうとしているのです。
一方で、差別は逃れられないものだと、少女が話すほど根深く、深刻なものでもあります。

10代の少女)
「ここを去っても去らなくても関係ないの。人種差別は皆を追い回すから。どこにいてもどんなに遠く離れても、ここに居ても差別は起きるあなたは差別されなくてもあなたの周りでは差別は起きるのよ」

人種差別をめぐり分断が深まる中で起きた銃乱射事件。
白人がマイノリティになる未来が現実のものとなりつつある中、アメリカでは政治的な理由で、グレート・リプレイスメントが進められていると信じる成人は3割にも上っています。

取材・編集・ナレーション:猪ノ口克司朗
撮影:池谷俊明
取材:中田紘也
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp/a>

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