埼玉・本庄 5歳児傷害致死 “同居人から引き離せないか”保育園から市に相談も

埼玉・本庄 5歳児傷害致死 “同居人から引き離せないか”保育園から市に相談も

埼玉県本庄市で5歳の男の子に暴行を加え死なせたとして、母親と同居人の男女ら3人が逮捕された事件。「親子を同居人から引き離せないか」と虐待を懸念する保育園から相談を受けていたことを市が初めて明らかにしました。

本庄市 吉田信解市長
「果たして（市として家庭に）踏み込めたかなというと、現実はやはり踏み込めなかったということなんだと思う」

5歳の男の子の命は救えなかったのでしょうか。柿本歩夢くんは今月5日、埼玉県本庄市で住宅床下の土の中から遺体で見つかりました。この家に住んでいたのは、母親の柿本知香容疑者と知人の男女2人。警察はこの3人について、歩夢くんを投げ飛ばすなど暴行を加え、死亡させたとして逮捕しています。

歩夢くんをめぐっては、去年、本庄市内の飲食店の店主が異様な光景を目にしていました。

飲食店の店主
「店内で子どもが男に正座させられ、1時間以上叱責されている。その様子を母親がスマホで撮影している」

母親の目の前で歩夢くんを叱責していたのは、共に逮捕されている同居人の丹羽洋樹容疑者です。虐待を疑った店主は、歩夢くんの通う保育園と本庄市の「子育て支援課」に通報。保育園からも市に通報があり、市は翌日、担当者が歩夢くんの母親の柿本容疑者と面談したとしていますが、その半年後、歩夢くんは遺体で見つかりました。

この間、見逃されたSOSはなかったのでしょうか。事件直後の会見で市は・・・

本庄市 吉田信解市長
「市としては、虐待が行われているという認識ではなかった」
本庄市子育て支援課 加藤久美子課長
「保育園では特に変わった様子はなく、過ごしていたとのこと（保育園からの報告）でした」

こうした市の見解を受け、JNNの取材に応じた保育園の副園長は・・・

歩夢くんが通う保育園の副園長
「会見内容について市に抗議しました。保育園は最初の通報以降も市に最大限働きかけたが、市は何もしてくれなかった。頻繁に電話して、行政の権限を使って踏み込んでくださいと頼んでいたんです」

副園長は、丹羽容疑者に怯える歩夢くんの様子や丹羽容疑者の車のナンバーなどを伝え、繰り返し対応を求めたと涙ながらに明かしました。

食い違う言い分。市に取材を申し込むと・・・

本庄市担当者
「保育園とのやり取りの記録はない。電話はあったが、必要のない記録は残さない」

「記録がない」と繰り返した市の担当者。きょう、本庄市の吉田市長は・・・

本庄市 吉田信解市長
「園が何度も市に話して、園と市の記録に齟齬があって、市が対応していないということはないです。（Q.〔園が〕行政権限で動いてほしいと訴えたが？）どういう意味でおっしゃったのか分かりませんけど、なんとか、このお子さんと母親が今いる環境から抜け出て生活できるようにできないんですかねという相談が市に寄せられていたことは事実です」

市長は、歩夢くん親子を丹羽容疑者から引き離せないかと保育園から相談があったことを初めて明らかにしました。

そのうえで、歩夢君が丹羽容疑者と暮らしていた事件現場の住宅を訪ねるなどの対応を取らなかったことについて、市長は「現実的には踏み込めなかったと思う」と繰り返しました。
（29日17:37）