「他の政治家では意味が弱いと思った」山上被告が安倍氏を狙ったの理由を語る　奈良地裁

「他の政治家では意味が弱いと思った」山上被告が安倍氏を狙ったの理由を語る　奈良地裁

　安倍晋三元首相が銃撃され殺害された事件の裁判員裁判。山上徹也被告は安倍氏を狙った理由について「他の政治家では意味が弱いと思った」と語りました。

　なぜ安倍元首相は狙われたのか――。

　山上被告
　「（旧統一教会に）自分が怒りを感じていることを示すために撃ちました」
　検察官
　「その頃には安倍元総理を襲撃することを決めていた？」
　山上被告
　「そうです」

　本人の口から事件の核心が語られました。

　3年前、奈良市で応援演説中だった安倍元首相を殺害した罪などに問われている山上被告。

　裁判では、母親の旧統一教会への多額の献金が与えた影響が大きな争点となっています。

　11月20日から始まった被告人質問。

　弁護側
　「自分が45歳まで生きていると思っていましたか？」
　山上被告
　「……生きているべきではなかったと思います」

　母親が教団に入会したのを知ったのは中学生のころ。献金は総額1億円に上り家庭が崩壊していった経緯を淡々と語りました。

　山上被告（11月20日・被告人質問）
　「実際に食べるものがない状況になってしまって旧統一教会に（自分が）間接的に利用されていると思っていました」

　2015年には母親の信仰に反対していた兄が自殺。

　それ以降、山上被告は教団のトップ、韓鶴子総裁やその娘が来日した際に、火炎瓶などで襲撃しようとしましたが失敗に終わったことを明かしています。

　そんな中、目にしたのが安倍氏が教団の関連団体に送ったビデオメッセージでした。

　山上被告（11月25日・被告人質問）
　「（旧統一教会が）どんどん社会的に認められている。何も害のない団体と認知され、 被害を被った側からすると、非常に悔しい。絶望と危機感」

　事件の1年半ほど前から、銃の製造を始めたといいます。

　そして2日。

　検察官
　「（事件当日について）安倍元総理が来てどんなことを考えた？」

　山上被告
　「本当に来たんだな」「銃撃するなら後方からと思い、警備員が私が考えている方向に移動し偶然とは思えない、警備の目がそれていたので、今と思って車道に出た。射撃の本で撃つときの心得は『無心で撃つこと』とあり、なるべく何も考えずに撃った」

　安倍氏を狙った理由について問われると――。

　山上被告
　「安倍元首相と教会との関係が公に続いていくとすれば受け入れがたい。嫌悪感や、敵意が強まっていった」「安倍元首相は、旧統一教会と政治との関りの中心にいる方、他の政治家では意味が弱いと思いました」

　裁判は3日、4日も被告人質問が続き、12月18日に結審する予定です。

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

（黒木千晶 キャスター）
被告人質問が3日目となり、事件前日、そして当日のことが被告の口から語られています。
まずは事件前日までを見ていきたいと思います。

　検察側からの質問で教会関連施設を狙った理由が聞かれました。
　「高3の頃セミナーで訪れ奈良 統一教会で思い当たるのがこのビルだった」と（山上被告は）供述しています。
　そしてその理由について「自分が怒りを感じていることを示すため撃ちました」と話しています。

　なぜ先に教会を狙ったのかという質問に対しては
　「教団の関係者であれば、（安倍氏と教団の）関係性が深いのは常識だが一般社会では分かっていない、あらかじめ示しておかないといけないと思った」と話をしています。

　安倍氏の奈良入りについても検察側から質問がありました。
　「前日に自民のホームページを見て奈良での街頭演説を知った。（岡山で）失敗した翌日にも来るとは。偶然ではないと思った」
と供述しているということです。

　そして事件前日までの話です。

　前日に教会関連施設を銃撃したのはなぜという検察側の質問に対して
　「自分が怒りを感じていることを示すために撃った。怒りの対象は旧統一教会である。
　その頃には安倍元総理を襲撃することを決めていたかという質問に対して
　「そうです」というふうに話をしています。

　検察側の撃った時の気持ちはという質問に対し
　「射撃の本で撃つときの心得は『無心で撃つこと』とあり、なるべく何も考えずに撃ちました」と話しています。

　現行犯逮捕の際、「当たったか」とたずねた理由について聞かれています。
　「発砲した直後どういう状況か確認する間もなく（捕まった）。状況を確認したかった」と話しています。

　そして裁判員から殺人に至るまでの状況の変化も聞かれています。
　「（安倍元首相出演の動画を見て）困惑したというか失望したというか、今後も安倍元首相と教会との関係が公に続いて認められていくのは受け入れがたい」というふうに話をしています。

　事件当日、どのように安倍元首相に近づいたか？
　「銃撃するなら後方からと思っていたが警備員がいた。代わりの方向から撃とうかと考えていた時に警備員が私が考えている方向に
移動。偶然とは思えない。自転車とか台車に警備の目がそれていたので今と思った。なるべく何も考えずに撃ちました。」とはなしています。

　偶然という言葉が何度も出てくるところも印象的です。

（高岡達之 特別解説委員）
　この裁判始まってから何度か同じことを申し上げていると思うのですが、当然ながら、ほとんどの被告人にとって殺人は初めてのことです。裁判で理路整然とした状況の説明ができることの方がおかしいとは思っているのですが、それにしても、これだけ聞いても何か飛躍があるなという違和感が拭えないんですが、清原さんは、ここまでご覧になってどういうふうに思いますか？

（清原博 弁護士）
　安倍さんを狙ったのは、安倍さんをいわば殺害することで社会の注目を集めて、この教団の問題とかを社会的に知らしめたいという思いがあったと思います。ただ、そこでなぜ安倍さんの命を奪う必要があるのかというところですね。

　裁判官の質問でも、安倍さんを狙うにしても安倍さんの命を奪う必要はなかったのではないかと。どこかで殺害を思いととどまることができなかったのか、人を殺害する時に躊躇しなかったのかといった質問があります。

　それは、本当に、その自分の目的が何らかの動機があったとしても、本当に安倍さんの命を奪うというところまで行く必要があったのか。そこがどうしても裁判官は腑に落ちないと考えているようです。私もそこをもう少し知りたいと思うし、もし本当に山上被告も話せないような状況だとしたら、最終的な量刑判断にどのような影響を与えるのかというところですね。

（黒木千晶 キャスター）
　殺人は思いとどまらなかったのかという裁判官からの質問に対して
　「銃の製造にかなり費用や時間、経済的に追い詰められた。やめてしまうと何のためにしているのか、思いとどまることは無かった。」と供述しています。

　この安倍元首相をなぜ狙ったのかというところに話が進んでいきます。
　
　裁判長：殺害することに関して葛藤は？
　「宗教は狂信になると自分の生活をかえりみないということもあるので、確信を持ってやっている人や組織に対して通常の手段というのは難しい」

　裁判官：安倍氏以外対象にならなかったのか？
　「他の政治家では意味が弱いと思った」

　裁判官：襲撃対象をいつ安倍氏と決めたのか？
　「申し訳ない、もう少し考えさせていただけたら」

　裁判員：目的は達成できたのか？
　「（長い沈黙）それは非常にいろいろな問題が起こりますのでお答えはできかねます」

　裁判員：安倍氏に対する心境は？
　「安倍元首相に対する強い怒りではないが、頭の片隅や心のどこかに引っかかり続けていた」という話があります。

　(高岡達之 特別解説委員)
　裁判長あるいは裁判員の質問は、安倍氏という言葉がたくさん出てきますよね。ということはやっぱり被害者は安倍晋三さんという個人だろうと。その方に対しての思いは…ということが、判断をする立場の人にとっては、納得できる答えが被告人から欲しいということでしょうね。

　(黒木千晶キャスター）
　今回の裁判が母親の旧統一教会の多額の献金が与えた影響が大きな争点となっています。

　弁護側の証人として宗教学者の方が出てきているんですけれども、家族の経歴を話してから献金が積み重なり、自宅の売却自己破産に陥ったことなどを挙げて宗教的被害と表現されているということです。

　そして山上被告については、自助努力はしていたが希望の職につけず、自分の人生の内省が深まり旧統一教会への怒りが襲撃の準備につながったなどと証言しているということです。

　清原さん、このあたりは、情状面でどのような影響があるでしょうか。

　（清原博 弁護士）
　弁護側の主張としては、山上被告の生い立ちとか家庭環境などを考えた時に、今回やった非常にひどい事件を起こしたけれども、この家庭環境だったら山上被告を一方的に攻めることができないでしょうという情状面の訴えなんです。宗教専門家から見ても山上一家はやっぱり宗教的被害者なんだ。こういう状況にあるの専門家から見てもね辛い状況なんだということを証言してもらって、山上被告やったことはひどいけども一方的に攻めるのはかわいそうじゃないですかということを弁護側が言いたいと思うんです。

（黒木千晶 キャスター）
　検察側はこの不遇の生い立ちは刑罰を軽くするものではなく、被害者は何ら関係ないと指摘をしていますので、今後裁判がどうなっていくのかというのが注目なんですけれども、今後の予定見ていきましょう。

　被告質問はまだ行われますので、この後の裁判でもどういった話が被告人から出てくるのかが注目されます。

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