【東日本大震災】地震や津波から逃れるも「低体温症」の危険…寒さへの備えどうすれば?
11年前に起きた東日本大震災では、地震や津波から逃れた後、多くの方が寒さによって「低体温症」の危険にさらされていました。この「低体温症」の大きな被害を、初めて想定した報告書がまとまりました。寒さ対策、どのように備えればいいのでしょうか?
■津波から難を逃れるも…“寒さとの戦い”
震災遺構になっている宮城・山元町の中浜小学校。2011年3月11日、2階の天井にまで迫る約10メートルの津波が押し寄せました。海から約400メートルの校舎、周りの建物はほとんど津波で流されてしまいました。
大津波警報が出ている中、当時の中浜小学校の校長で、現在は語り部として震災の教訓を伝える活動をしている井上剛さんは、避難所ではなく垂直避難を選択。児童や地元の人たち、約90人を屋上の屋根裏倉庫に避難させ、全員助かりました。
しかし、津波から難を逃れたものの、床は冷たいコンクリート。救助されるまで“寒さとの戦い”だったといいます。井上さんは、「寒さはしのげませんでした」「コンクリートの床から、冷たい空気がどんどん上がってくる」と当時の状況を話しました。
――屋根裏のもので、どんな暖をとる工夫を?
井上剛さん「段ボールや発泡スチロール板とか。コンクリートの床に敷きつめて、少しでも下からの冷たい、温度を下げるものが上がってこないよう、必死で工夫しました。我々は体をぬらさなかった。生き延びることができた一つの要因だと」
■日本海溝地震が冬の深夜発生なら…最大4万2000人が「低体温症」による死亡リスク
寒さにどう備えるか。特に危険なのは「低体温症」です。体の奥の深部体温が35度を下回ると発症し、けいれんなどの発作を起こして命を落とす可能性があります。
この「低体温症」がもたらす大きな被害を、初めて想定した政府の報告書が去年12月に公表されました。
日本海溝地震。冬の深夜に発生した場合、最大4万2000人が「低体温症」による死亡リスクにさらされるとしています。
想定の作成に携わった日本赤十字北海道看護大学の根本昌宏教授は、低体温症対策の重要性を訴えています。
根本昌宏教授「床面が0度の時、そこに寝そべってしまうと、冷蔵庫で寝ているのと同じ環境になり、とても眠ることはできません。体温の再生能力が低い子どもたちは、すぐに低体温症を起こす危険性がある。段ボールベッドは一つの選択肢になると思います」
■段ボールベッドは寒さに有効? 効果や寝心地は?
杉野真実アナウンサー「日本赤十字社に来ました。きょうはこちらで段ボールベッドを体験させていただきます」
日本赤十字社が用意している段ボールベッド。内部は、小さい段ボール箱がいくつも入っていて、私物などを収納するスペースに。また、テープなどの道具を使わずに組み立てられます。実際に座ってみると…。
杉野真実アナウンサー「想像以上に安定感がありますね。段ボール箱の上に座っているとは思えないほど、強度を感じます」
ビニールシートと段ボールベッドの寝心地を比べてみました。
杉野真実アナウンサー「床がすぐ下にある、背中に床を感じるといいますか、その状態がずっと続くことになるのがよくわかります」
段ボールベッドに寝てみると…。
杉野真実アナウンサー「寝返りをうっても、感じるのは少しやわらかな暖かみのある部分、床の硬さは感じません」
根本教授の実験では、床に寝るよりも約8度から10度、温度を高く保てることがわかり、効果が期待できるといいます。
根本昌宏教授「暖房がない状況でも、自分たちが体温を保つことができる方法。これが一つの災害対策として必要なのではといったことを認識していただき、家庭の事情に応じて、寒さ対策というのも、災害対策の中に入れていただきたい」
(2022年3月12日放送「news every.」より)
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