「関門海峡渡る能力ある」身体能力 定置網にかかるクマ(2023年12月5日)

「関門海峡渡る能力ある」身体能力 定置網にかかるクマ(2023年12月5日)

「関門海峡渡る能力ある」身体能力 定置網にかかるクマ(2023年12月5日)

 5日も岩手県の住宅街で男性がクマに襲われ、けがをしました。そんななか今、各地で目撃されている「泳ぐクマ」。専門家は、餌(えさ)を求めて本来生息していないはずの九州にも上陸する可能性があるといいます。

■「泳ぐクマ」各地で目撃多数

 流れに逆らっているのでしょうか。上流とみられる方向へ、ぐんぐん泳いでいます。先月、秋田県大仙市でカメラが捉えたクマが泳ぐ映像。仙北市では10月、2頭が流されながらも川を横断。

 地元の人:「犬の散歩で午前5時ごろから歩く。怖くて、きょうは車で(犬)を連れて行った」

 さらに湖をスイスイと泳ぐクマの姿も…。

 撮影者:「犬かきをしていた」

 手足を起用に動かし、陸へ。そのまま茂みへと消えていきました。

■エサ求め“生息域”拡大の危機

 相次いで目撃される、この“泳ぐクマ”。クマが泳ぐ、そもそもの理由を専門家に聞くと…。

 森林総合研究所 動物生態遺伝チーム長 大西尚樹氏:「特に若い雄が自分の場所を確立できないと、新天地を求めて泳ぎ出した、ということが考えられる」

 個体数が増えるとクマがいない他の土地へ移動する習性が。

 各地で目撃される“泳ぐクマ”。懸念されるのは生息域の拡大です。山口県内、あちらこちらにクマの痕跡がありました。栗の木には…。

 地元の人:「これとか引っかいている。駄目ですよね。収穫はできない。若い木を折る」

■クマ被害 山口で去年の7倍に

 今年7月、山口県内でわなにかかり、動物園に引き取られた子グマです。山口県警によると、5日朝時点で寄せられたクマに関する情報は222件。去年の32件と比べると、すでにおよそ7倍に達しています。一体なぜ、ここまで目撃情報が増えたのでしょうか。

 森林総合研究所 動物生態遺伝チーム長 大西尚樹氏:「(1980年代ごろ、ツキノワグマは)中国地方と紀伊半島で絶滅の恐れがあった。そのため保護策が取られた。これがうまくいって(クマの)数が増えていって、この数十年の間に猟友会の人の数が減ってきた。元々、クマがいたエリアで数が増えたことで、山がクマで満ちてしまっている」

 個体数が増えると、クマは“ある習性”を発揮するといいます。

 森林総合研究所 動物生態遺伝チーム長 大西尚樹氏:「新しい個体は自分の生息圏を見つけることができないので、遠くに行かざるを得ない状況」

■エサ求め“未生息”の九州上陸?

 1987年を最後に野生のクマがいなくなった九州地方です。実は、関門海峡を隔てた本州の最西端・山口県でクマが激増。海を渡ってこないかと戦々恐々としています。

 果たして新天地を求めるクマが九州へ渡る可能性はあるのでしょうか。

■「関門海峡を渡る能力ある」

 クマにとって最大の障害は山口県下関市と北九州市を隔てる関門海峡です。その幅は最短でおよそ650メートルです。大西さんは…。

 森林総合研究所 動物生態遺伝チーム長 大西尚樹氏:「クマは結構、泳ぎが得意なので、関門海峡くらいの幅の海であれば簡単に泳ぐことはできる」

 実際にどのくらい泳げるのでしょうか。福島県北部にある檜原湖で撮影された映像です。撮影者は…。

 桧原湖で11年 釣りガイド 石井勝也さん:「大型犬が泳いでいると思って。結構、沖の方だったので近くに人がいなく、犬だったら溺れたら大変と思って近付いた。そしたらクマだった」

 泳いでいた方向から推測すると、クマは対岸およそ900メートルの地点に向かっていたとみられます。関門海峡はおよそ650メートル。このくらいの距離は問題なく泳ぎ切ることができそうです。

 実際にはこのクマ、船に驚きその場で旋回。150メートルほどの距離を戻り、陸に上がりました。

 桧原湖で11年 釣りガイド 石井勝也さん:「(泳ぐスピードは)早歩きくらい。(時速)4から5キロじゃないかな」

 距離だけなら関門海峡も渡れるというクマ。しかし、そこには高いハードルが…。

 森林総合研究所 動物生態遺伝チーム長 大西尚樹氏:「関門海峡は非常に流れが強い」

■3頭の子グマ 背中に乗せて…

 クマの泳ぐ力はどれほどのものか。海外では3頭の子グマを背中に乗せながら泳ぐパワフルなクマ。そのまま、子グマが泳げる岸の近くまで泳ぎ切りました。

■「20km以上泳ぐ」ヒグマの姿

 北海道根室市の湖。連なった2頭のヒグマがゆったりと渡っていました。この日本で最大の陸生哺乳類は海でどのくらいの力を発揮するのでしょうか。

 5年前、町を震撼させた出来事がありました。監視カメラが捉えたヒグマの姿。実は、この場所は北海道の利尻島。北海道から海を隔て20キロの島で撮影されたものでした。

 北海道野生動物研究所によると、クマの生息場所から島が見えるため、好奇心に駆られて海を渡ったといいます。数日、島を探索した後、戻っていったということです。

■クマの身体能力“生息地”拡大も

 ツキノワグマも東北では泳いで島に渡った事例はあるといいます。しかし実際に関門海峡を渡るとなると…。

 森林総合研究所 動物生態遺伝チーム長 大西尚樹氏:「山口県側から九州にクマが泳いで渡るかどうかは現時点ではかなり可能性は低いと思うが、100年から200年のスパンで考えた時は、可能性はゼロではない。たまたま泳いで渡れたとか、真っすぐ行けなくても流されて気付いたら九州だった、なくはない」

 今よりさらにクマの頭数が増えるなど、差し迫った状況にならなければ九州に渡ろうとはしないということです。
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp/a>

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