新生児も命の危険にさらされるガザの病院…人々はなぜ逃げられないのか?「天井のない監獄」と“500㎞の地下トンネル”とは? 【サンデーモーニング|TBS NEWS DIG
衛星写真の分析をもとに作られたガザの被害状況マップ。建物が全壊したエリアを示す真っ赤に染まった北部の市街地に、シファ病院があります。
燃料が尽き、未熟児の命をつなぐための保育器すら使えない極限状態の病院に突入したイスラエル軍。そこには、入院患者のほかに、住む場所を追われた1500人もの周辺住民らも身を寄せていました。
人々はなぜ、そんな場所にとどまらざるを得ないのか。逃げ場のない「天井のない監獄」で続く、極限の人道危機。手作り解説でお伝えします。
■衛星写真から見えてきた被害状況
パレスチナ自治区ガザですが、広さは東京23区の6割ほど。ここに220万人が住んでいました。そんな人口密集地へのイスラエル軍の攻撃で、どれほどの被害が出ているのか…。
こちらは、国連機関が分析した建物の損壊状況です。赤色が濃いほど破壊された建物が多いのですが、北部に攻撃が集中しているのが分かります。このエリアを攻撃前の衛星写真で見ると、建物が密集した市街地ということが見て取れます。住宅などの被害は7日の時点で2万5千棟に上り、150万人が住む場所を追われたとみられているんです。
この激しい攻撃にさらされているのがシファ病院です。攻撃を受ける前の衛星写真を拡大してみると、250メートル四方ほどの広い敷地に、いくつもの病棟が立ち並んでいて、1500人が避難しています。
■行き場を失う避難者たち
最後の頼みの綱だった病院さえもが攻撃を受け、人々が行き場を失う中、イスラエルは住民に対し、南部へ避難するよう要求。1週間余りで20万人が避難しましたが、30キロの距離を着の身着のまま、徒歩や、ロバにひかせた荷車での移動を強いられています。
その南部でも攻撃が続いていて、イスラエル軍は11月17日、さらに南部での攻撃拡大を示唆しています。国連の施設などには、すでに53万人以上の避難者が押し寄せて収容できる限界を超え、水や食糧、医薬品も極度に不足しています。
■”天井のない監獄” ガザ
そもそもガザ地区は、周囲にイスラエルが壁を建設し、海側も含めて完全に封鎖しているため、パレスチナ人は、脱出することもできないんです。これが、ガザが「天井のない監獄」と呼ばれてきた所以です。
■“500kmの地下トンネル”「メトロ」とは
2007年ごろから始まった、この封鎖に対抗するため、パレスチナ側は、ガザからエジプトへ向けてトンネルを掘り、物資の搬入に使ってきました。このようなトンネルの数は1000本ともいわれていましたが、イスラエル軍はこうしたトンネルについても度重なる空爆でことごとく破壊していて、現在はほとんど機能していないとみられます。
一方で、いま、焦点となっているのは、ガザ地区内に張り巡らされた「メトロ」とも呼ばれるトンネル。こちらの図は、イスラエル側が発表したそのトンネルの概要ですが、ハマス側からは総延長が500キロにも及ぶとの主張もあります。パレスチナ側の戦闘員は、こうしたトンネルに潜ってゲリラ戦のような抵抗を続けているわけです。
■安保理で初の”戦闘の休止”採択
ハマスの「せん滅」を掲げるイスラエル軍が、その目的にこだわれば、さらに戦況が泥沼化する恐れもある中、国連安保理では「戦闘の休止」などを求める決議が初めて採択されました。イスラエルを擁護するアメリカも、今回は拒否権を行使しませんでした。国連の人権問題のトップ(ターク人権高等弁務官)が、「世界中の危機の中でこれほど恐怖、怒り、絶望に満ちた現場はない」と表現したガザの状況は少しでも改善するのでしょうか。
(「サンデーモーニング」2023年11月19日放送より)
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