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大麻ショップ乱立…“大麻解禁”で変わるタイ 日本も近く医療用は解禁?規制どうなる(2023年10月15日)
あちこちに光る緑色の「大麻」ネオン。ショップの店員は「グリーンラッシュだ」と話します。
去年6月、タイでは、大麻の使用制限が大幅に緩和されました。「医療用」のはずですが、首都バンコクの繁華街では、大麻ショップが至る所に。一方、大麻中毒者が急増し、“大麻解禁”は、タイ社会の姿を変えています。日本では、今月20日に始まる臨時国会で、大麻成分を含んだ医薬品を認める法案が提出される予定です。なぜ、今大麻なのか。現場を取材しました。(10月14日OA『サタデーステーション』より)
◆薬物リハビリ施設に異変
私たちを迎えてくれたのは、大きな金色の大仏。ここは、バンコクから車でおよそ2時間の寺院です。広々とした敷地には、大きな大仏がずらり。これを目当てに訪れる観光客もいるといいます。ただ、その中にちょっと雰囲気が違う場所がありました。柵に囲まれた一角には、80人以上の男女の姿が…。10代~50代の男女。みんな、そろいの服を着て、談笑したり、広場を歩き回ったりしています。彼らは、薬物依存症になり、回復のために寺院を訪れた人たちでした。
この寺院では、薬物依存者向けの15日間のリハビリプログラムを無料で提供しています。30日間かけて作られた薬草湯を飲み、サウナに入り汗をかきます。4畳くらいのサウナには一度に20人くらいが入り、ぎゅうぎゅうに。汗だくでぞろぞろと出てきた人の多くは体にタトゥー。ただ、タイでは悪霊から身を守るという意味で仏教に関係したタトゥーを入れることも多く、日本とは受け止められ方が違います。
リハビリをする人たちは決まった時間になると、建物の2階に上がり、並んで座ってお経を唱え、瞑想もします。副住職によると、プログラムが60年以上続く中、規制緩和後の1年で大きな変化があったというのです。
タムクラボーク寺院・副住職
「大麻依存で来る患者が増えました。特に若い世代が目立ちます」
タイでは昨年6月、大麻が「規制薬物」のリストから外されました。その後、一気に患者が増えたというのです。
◆友人に勧められ…「中毒になってしまった」16歳
リハビリに取り組む人ごみの中に、まだあどけない顔の少年を見つけました。中部の農村出身の16歳。“解禁”後、大麻を始めたといいます。
大麻依存のリハビリをする少年(16)
「友達に勧められて、試したら中毒になりました。大麻はすごく簡単に手に入りました。家の近くの店に行けば普通に買えました」
少年は、大麻を手にしたことはありませんでした。しかし、規制緩和後、近くの雑貨店にはほかの商品に並んで大麻が…。使い始めるとやめられなくなり、小遣いをはたいて買っていました。少し前、親に見つかり、大麻をやめようと寺院を頼ったといいます。礼儀正しく、しゃべり方も穏やか。「普通の少年」で、とても薬物に手を出すようには見えませんでした。
まだあどけない子どもが大麻に手を染めるタイ。一方、日本でも若者が大麻に手を出す事件が後を絶ちません。日大アメフト部員や東農大ボクシング部員の大麻事件が報道されました。警察庁によると、昨年1年間に逮捕・書類送検される人の数は10年前のおよそ3倍の5342人。このうち、およそ7割が20代以下です。
◆日本での法改正 医療用大麻“解禁”?
そんな中、大麻をめぐる法律が変わりそうです。今月20日から始まる臨時国会で、政府は大麻成分を含んだ医薬品を認める法案を提出する予定です。なぜ、今「改正」なのでしょうか。
改正法案の作成に協力した湘南医療大学 鈴木勉 薬学部長
「諸外国では大麻由来のものを医薬品として使っている国々もあります。日本でもその有用性を利用していく必要があるんじゃないかと」
認められるのは、医療用で「てんかん」の治療薬。医師の処方箋がなければ入手できません。一方で『大麻規制を緩めるわけではない』と強調します。
改正法案の作成に協力した湘南医療大学 鈴木勉 薬学部長
「(大麻使用が)緩和されたんだっていうような捉え方で伝わっている面もありますけれども、決してそうではありません」
今回の法改正では、むしろ、規制を強める方針です。これまで、大麻は「大麻取締法」で規制されていましたが、法案では、大麻を「麻薬及び向精神薬取締法」(麻向法)に入れることで、「麻薬」として位置づけます。コカインやLSDといった麻薬と同じ扱いになれば、「所持」も「使用」も規制の対象になり、懲役もこれまでの5年以下から7年以下へと延びるとみられています。
こうした厳格化の背景には『大麻の危険性』があります。いったい何が危険なのか、大麻成分が脳に及ぼす悪影響について世界に先駆けて発表した専門家にききました。
滋慶医療科学大学 木村文隆教授
「成長している(脳の)神経を刈り取ってしまう。正しい神経回路ができなくなる可能性がある」
◆脳の神経にダメージ?大麻成分の怖さ
私たちの脳には、人格を形成したり、運動の指令をしたりする『神経回路』が張り巡らされています。木村教授らの研究によると、大麻成分のTHC(ティー・エイチ・シー)が脳内に取り込まれると、必要な神経を削り取り、正しい神経回路ができなくなる可能性があるというのです。その結果…
滋慶医療科学大学 木村文隆教授
「正しい人格が出来上がらない、感覚情報処理、高度な判断、運動指令も正しく出ることができなくなることが考えられます」
さらに、大麻はより刺激の強い薬物使用に発展する「ゲートウェイドラッグ」としての危険性も指摘されています。
こうした危険のある大麻がはびこるタイでは、日本と同じ「医療用」の解禁のはずでした。それが「大麻バブル」を意味する「グリーンラッシュ」と呼ばれる状況になってしまったのです。街中には、堂々と看板を掲げた大麻ショップがひしめいていました。さらに、フロア全体に大麻ショップが集まる建物も。一帯に近づくと、鼻をつくにおいがします。
「あれ、日本人では……?」
取材中、日本語を話す2人連れが。その場で見ていると、1時間足らずで4組の日本人らしき若者が大麻を購入したりする姿を確認しました。たとえ海外でも、日本人が大麻を所持すれば罪に問われることがあります。そう伝えましたが、日本人の1人は「試しに吸ってみたかった」などと話していました。
大麻ショップ店員
「(”大麻解禁”後は)店を始める人が多かったです。“グリーンラッシュ”状態でしたね」
◆危険な大麻 タイでなぜ?
大麻で盛り上がるビジネスは「グリーンラッシュ」と表現されていました。去年6月、健康目的の個人使用や栽培などが認められるとタイ社会は一変。“医療用”なのに処方箋は必要なく、たとえ“娯楽目的”でも自由に購入できてしまうのが実情です。
チュラロンコーン大学 アモン博士
「“大麻解禁”は、経済活性化のためでもあります。法律を作る時に、ある意味“見切り発車”みたいな感じで法律が発動されてしまったんです」
コロナで観光業にダメージを受けたタイ。大麻を解禁することで観光客を呼び込もうという意図もあるようです。
タイで大麻が「規制薬物」から除外されたのは昨年6月。しかしその後、国政選挙や政権交代の中で、規制があいまいになったまま、ほぼ「無法状態」と化してしまいました。混乱の中で広がった「グリーンラッシュ」は、バンコクから数百キロ離れたタイ北部にも及んでいました。
農園のオーナー
「このハウスでは以前、トマト、パプリカ、きゅうりを育てていましたが、今は大麻を育てています」
タイ第2の都市チェンマイ郊外にある農地。坂になった敷地には一帯に農業用ハウスが広がっていました。友人とこの農地を運営しているという男性が説明してくれました。この農家は、“解禁”後すぐに、土地全体の3分の1を野菜から大麻の栽培に変えました。売上は、これまでの3倍から4倍。従業員も8人増やしたそうです。この農家は政府から認可を受けて大麻を栽培しており、「最近の大麻が氾濫する社会は心配だ」と漏らしていました。
「グリーンラッシュ」が一気に広まった理由は、人々の“誤った認識”も関係していました。
チュラロンコーン大学 アモン博士
「インターネット上でやりとりして、大麻はそんなに危なくないものだと認識してしまった人たちがいたからだと思います」
◆「7年間、ただ空白だった」元依存者が語る大麻
「大麻は危なくない」――。そんな意見は日本にもあふれています。大麻依存症になった男性が、その思いを語りました。
大麻依存症だった男性
「最初は地元の先輩というか友人たちから『やらないか』ということで始めました。断ったら仲間外れにされてしまうんじゃないかと」
大麻を吸い始めたのは16歳の時。次第に、やめられなくなりました。
「大麻を中心に生活が回っていた」
男性はそう話します。人間関係や仕事で悩みがあるとつい手を出してしまう。「やめることを考えられなくなった」といいます。
大麻依存症だった男性
「朝が来なきゃいいのにと思っていました。ダメな自分でも認めたくなかったりとか」
依存症をサポートする施設「ダルク」に通い、苦しみながら薬物を絶ち、今は依存症患者の相談にのっています。相談を受ける側に回った今、依存症患者は家族との関係をうまく築けなかったり、仕事で悩む人たちが多いと気づきました。当時を振り返って思うのは…。
大麻依存症だった男性
「約7年間くらい、大麻を使い続けてきて、ただ空白の時間だけが残っていて。社会的メリットっていうのは全然なかったですね。本当、デメリットだけでした」
男性は、「最初の一歩を踏み出さないでほしい。苦しくなったら、薬ではなく周りの人を頼ってほしい」と力を込めて話していました。
◇◇◇
高島彩キャスター
「日本とタイで『医療用』大麻について取材した、染田屋(そめたや)ディレクターに話を聞きます。タイでは、『医療用』の大麻のはずが、街中に溢れてしまっている現状があるんですね」
取材ディレクター 染田屋竜太
「タイでは医師の処方箋も必要ないですし、医療用といっても『リラックス』で使われてしまうこともあるので、ほぼ無法状態です」
高島彩キャスター
「日本でも、同じような事になってしまう心配はあるんでしょうか」
染田屋ディレクター
「日本の法改正については、医師の処方箋が必ず必要になります。そして、さらに規制を強める方針です。今、大麻は『大麻取締法』で規制されていて、『所持』した場合には罰せられるんですが、『使用』の場合は罰せられないのが現状で、5年以下の懲役です。ただ、今回の法改正でコカインなどと同じ『麻薬取締法』の対象になって『所持』だけでなく『使用』も罪に問われるようになり、7年以下の懲役となりそうなんです」
高島彩キャスター
「かなり厳しくなるということですよね。若者への広がりが問題になっているので、罰則を強化することで、歯止めがかかると期待したいですね」
染田屋ディレクター
「大麻は若いうちに1~2回使っただけでも、脳に異変が起きてしまうという研究結果が出ています。それから、大麻事件を取材していますと、やはり大麻の売買というのが暴力団などの資金源になってしまっているんです。ですので、大麻の購入は反社会的勢力を資金的に助けてしまっていると自覚を持ってほしいです』
高島彩キャスター
「取材した男性も、深い後悔の中にいましたよね。改正法案については20日からの臨時国会に提出される予定です。大麻の乱用に繋がらないよう願います」
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp/a>
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