「真っ暗なトンネルにいる感覚」“父親”の産後うつ 発症リスクは母親と同程度11% キーワードは“孤立させない”【news23】|TBS NEWS DIG
「母親の」産後うつは、なじみがあるかもしれませんが、今回取り上げるのは、「父親の」産後うつです。母親と同程度の発症リスクがあるといわれる父親の産後うつ。その要因は何なのか、経験者を取材しました。
■ワンオペ育児で一変「ずっと楽しかった育児が急に…」
名古屋で暮らす平松さん夫婦。
やんちゃ盛りの5歳の双子、なゆたちゃんとれいくんの子育て真っ最中です。
夫婦は2012年に結婚。その6年後、待望の子どもが誕生しました。夫の勇一さんは、子どもが生まれてすぐ約1年間の育休を取得しました。初めての子育ては大変でしたが、子どもと過ごす時間は幸せだったといいます。しかし、その日々はあることがきっかけで一変しました。
平松勇一さん(37)
「(妻が)再就職してまた働きに出るというタイミングがあって、そこで週3日ぐらいのワンオペ育児を僕がやるようになって。そこのタイミングで、ずっと楽しかった育児が急に楽しくなくなってしまって」
“2人分の命を1人で預かるプレッシャー”で子どもたちから片時も目を離すことができず、自分がトイレに行くことさえ不安に感じるように…そんな勇一さんの異変に気付いたのは妻の有咲さんでした。
妻・有咲さん(36)
「寝室に行ったら電気もつけずに泣いている娘と正座なのか座りながらトントントンとしているだけ。『これは結構きてるな』と思って。とにかく病院に連れて行かなきゃと思ってすごく言った気がします」
■“職場復帰への不安”も…「真っ暗なトンネルにいる感覚」
2019年3月、勇一さんが心療内科で診断されたのは「うつ病」でした。
平松勇一さん
「自分で気づいたというよりは、言われてはっとしたというか」
当時は1年の育休が終わりに差し掛かった頃で、“職場復帰への不安”も抱えていたといいます。
平松勇一さん
「というのも転職して半年で育児休業に入ってしまっていたので、働いてる期間よりも長い育児休業期間に入る。そこで(職場に)戻って自分が何をすればいいのかなという不安も当然あった」
勇一さんのうつ症状は、子どもを保育園に預けられたことや職場復帰がスムーズにいったことで回復していったといいます。
平松勇一さん
「どこにも行く道なくなっちゃったなって。真っ暗なトンネルに入ってたような感覚になるんですよ、あの時って。子どもを預けて仕事の依頼が来た時に一筋の光見えたと思って」
■仕事と両立“限界”「無理をしたら全部できなくなる」
産後多くの母親が経験する「マタニティブルー」は、ホルモンバランスの急激な乱れなどにより引き起こされる精神の不調で、長期化すると「産後うつ」と呼ばれます。しかし、「産後うつ」は出産を経験しない父親にもそのリスクがあることが分かってきました。
国立成育医療研究センターによると、父親が産後1年以内に精神の不調を感じる割合は11.0%。母親の10.8%と同程度の割合です。
産後うつを経験した斉藤圭祐さん(34)
「僕がうつ病と診断されたのは2022年5・6月。直前の出来事というよりもわりと積み重ね」
自営業の斉藤さんは、第二子の次女が生後5か月の時「うつ病」と診断されました。
新規事業の立ち上げが出産時期と重なった上、子どもの夜泣きで睡眠は細切れに…長女の育児と合わせると3年間、“疲労の蓄積”が続きました。
斉藤圭祐さん
「(仕事と育児)両方やれる・できる、やるんだって思っていた。ただやっぱり限界があるんだなっていうか、できる範囲とか時間とか限られているから無理をしたら全部できなくなるんだなとはいまは思っている」
■専門家は…“孤立をさせないこと”が何より重要
「産後うつ」の当事者を数多く見てきた産婦人科医で産業医の平野さんは、“孤立をさせないこと”が何より重要だといいます。
産業医・産婦人科医 平野翔大氏
「自分は悩みを表出しちゃいけない、強くあらねばならない、父親だから、というのにとらわれて全部頑張って抱えすぎてキャパシティ障害を起こす。まさにこの孤立の環境は最も重大なメンタルヘルス不調のリスク」
■「孤立」を防ぐ取り組みは
小川彩佳キャスター:
男性だから強くあらねばならない、父親として大黒柱であらねばならない…いろんな「ならねばならない」にがんじがらめになってしまうのは想像できますよね。
山本恵里伽キャスター:
孤立を防ぐことが大切という話がありましたが、育児をしている夫婦に「育児の相談や愚痴を言える相手は誰か?」を聞いた調査があります。
<育児の相談・愚痴の相手>※2019年リクルート「Iction!」調べ
【父親】
1. 仕事関係の友人・知人 37.8%
2. いない 31.2%
3. 自分の母親 20.8%
【母親】
1. 自分の母親 60.2%
2. ママ友・パパ友 40.2%
3. 仕事関係の友人・知人 33.1%
父親に関しては、2番目に多かったのが「相談相手がいない」という声でした。
小川キャスター:
同じ経験をしたことがある人に相談しやすいということから考えると、同じような状況にある方がそもそも少ないのかもしれな…(https://newsdig.tbs.co.jp/list/article?id=jnn-20230921-6110892)
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