Twitter買収.ウクライナ通信遮断の裏側…イーロン・マスク伝記本著者に聞く(2023年9月19日)

Twitter買収.ウクライナ通信遮断の裏側…イーロン・マスク伝記本著者に聞く(2023年9月19日)

Twitter買収.ウクライナ通信遮断の裏側…イーロン・マスク伝記本著者に聞く(2023年9月19日)

伝記『イーロン・マスク』が9月13日に、世界同時発売されました。

伝記は、本人のこんな言葉で始まります。
書籍『イーロン・マスク』:「私は電気自動車を一新した。宇宙船で人を火星に送ろうとしている。そんなことをする人間が、ごく普通でもあるなどと、本気で思われているのですか」

執筆したのは、ウォルター・アイザックソンさんです。

伝記作家・アイザックソン氏:「『2年間完全密着で取材して、あらゆる会議も含め、完全NGなしでお願いしたい』と申し出ると、驚いたことに彼から『OK』が出ました。(Q.その2年間は、大変な思いをしましたか)砂浜でのんびり冷たいビールを飲む、そんな取材ではなく、ピリピリと張り詰めっぱなしでした。『マスクが仕事を楽しんでいるか』そう問われれば、答えはNOです」

今回、アイザックソンさんは、本人だけでなく、128人の関係者に話を聞き、伝記を完成させました。マスク氏と破局と復縁を繰り返しているパートナーの証言もあります。
書籍『イーロン・マスク』:「空気を読むのは下手ですし、感情的な理解が普通と大きく違うんです。そして、ぽんぽんとものすごい勢いで、それが切り替わるんです。悪魔モードは、すさまじい混沌をもたらします。同時に、成果ももたらしてくれるんです」

“悪魔モード”は、イーロン・マスク氏の深い闇と攻撃的な一面です。多くの人を傷つける一方、リスクを成功に変える原動力でもありました。
伝記作家・アイザックソン氏:「(Q.あなたの本を読んで、リスクを恐れないマスク氏に圧倒されました。そこには凝り固まって組織化されすぎた社会に対する重要な教訓があると思いますが)リスクをいとわない人物であること。これが重要だと思います。あなたが言うようにリスクをいとわないだけでなく、リスクが好きなのです。彼を成功に導いた要因の一つなのです。マスク氏のような存在は、リスクを冒す方向へ私たちを誘導してくれる意味で、良いことだと思っています」

テスラなどで成功していったイーロン・マスク氏が、新たに選んだリスクは『ツイッター』の買収でした。アイザックソンさんは、一部始終を真横で見ていました。
伝記作家・アイザックソン氏:「(Q.ツイッター買収は好手だったでしょうか)言えませんね。彼自身は『理想の遊び場』として、ツイートを楽しんでいましたが、工学・物理的反応は理解できても、感情・社会的交流の素質に欠けています。彼は、広告主の期待にうまく応えられないのです」

買収後、攻撃的な投稿が問題視され、広告は激減してしまいます。ツイッター、今の『X』を通じて、膨大なデータが集まることへの懸念は、消えていません。
伝記作家・アイザックソン氏:「彼は、自身の衝動を抑えられず、幼稚で当たり散らしてしまう。心が“陰の部分” にあるとき、そうすることがあります。できることなら“衝動抑制ボタン”を彼の親指につけて、悪質な投稿をさせない、そうしたいですね。ただ、伝記にはこう書きました。『仮に抑制ボタンでツイッターに衝動的な投稿を抑え込んだら、ロケットを衛星軌道に乗せられる人物は世に出るだろうか?縛られない自由なマスク氏こそが、火星やEVの時代への代償かもしれない』。ただ、マスク氏の言動が許されるとは思いませんが」

2年の密着中には、もう一つ、ウクライナへの関与という歴史の転換点もありました。
2022年、イーロン・マスク氏は、ウクライナに深く関わっていきます。地球上のどこにいてもインターネットができる『スターリンク』は、ロシアによって通信インフラが破壊されたウクライナとって生命線そのものだったからです。

伝記作家・アイザックソン氏:「スーパーヒーローに憧れるマスク氏が、ウクライナ政府に要請されたんです。『軍隊との通信手段が途切れて、これでは負けてしまう、助けてほしい』と。スターリンクのアンテナを100台、200台、1000台と無償供与して、軍隊との通信を可能にしたことで、本格侵攻1週間目の抗戦を支えたのです」

しかし、ある日、重大な決断を迫られることになります。
書籍『イーロン・マスク』:「『これは大災厄になるかもしれません』というメッセージがマスクから届いた。クリミアのセバストポリに駐留するロシア海軍を奇襲しようと、爆薬を満載した無人潜水艦6隻をスターリンク経由で誘導して送ることをウクライナ軍が考えているというのだ」

クリミアへの攻撃は、核戦争に突入すると考えていたイーロン・マスク氏。「スターリンクがエスカレーションに加担」は、許容できるものではありませんでした。
書籍『イーロン・マスク』:「『どうして私がこの戦争に関わらなきゃいけないんでしょう』。夜遅く、私との電話で、マスクはこう愚痴った。『スターリンクは、戦争用じゃありません。みんながNetflixを観てくつろいだり、学校の課題をオンラインでこなしたり、平和な良いことを何かするためのもので、無人機で攻撃するためのものじゃないんです』」

スターリンクの接続は切られ、ウクライナ軍の奇襲作戦は失敗に終わります。
伝記作家・アイザックソン氏:「奇襲攻撃の成否を決める力が彼の手にあったのです。一人の手には大きすぎる力でしょう。通信手段スターリンクを生み出したイーロン・マスクがいて良かった。ウクライナ軍だけではありません。病院・報道機関・学校のため。ロシア軍が遮断できない通信手段であって、どの企業も国家も開発できなかった。とても驚きました。(Qテクノロジーは政治や国際関係と切り離せないほど、強力な存在になってしまったと思えますが)テクノロジーに目を向けるとき、『私たちの道徳的な対処はできるのか』という問いに直面します。『新しいテクノロジーに追いついているのだろうか』。私たちは技術の道徳的な意味合いと格闘するべきです。ソーシャルメディア、生命科学、遺伝子編集ツール、スターリンクの衛星やインターネットもそうです。それらを規制したり、考察したり、道徳面を理解するには、多少なりとも、その技術と開発者たちを理解しなければならない」 

アイザックソンさんは、これまで、時代を創り変えた人たちに焦点を当てた著書を数多く出しています。彼らに共通するものは何なのか。
伝記作家・アイザックソン氏:「クレイジーな人たち、不適合者たち、反逆者たち、“出る釘”たちに乾杯!ということ。誰のことか?それは、ヴェンチ村から出てきた若きゲイのダ・ヴィンチ。ユダヤ人としてドイツで育ったアインシュタイン。養子として居場所がないと感じながら育ったジョブズ。南アフリカで幼少期にトラウマを背負ったイーロン・マスクを指しているのです。日本、パリ、ニューオリンズ、どこであろうと、世界を変えられる。大それたことを信じる、ときには必要という教訓です。イーロン・マスクほど向こう見ずではなくても、マスク氏やジョブズなど、多くを成功に導いた“良い原動力”を理解しようとする努力はあってもいいのかもしれません」  
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp/a>

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