【検証】岸田首相のコトバ “日本の安全保障の転換点”反撃能力 国会で明らかにした“手の内”と、求められる“国民へ届くコトバ”
防衛力強化を進める岸田政権が新たに打ち出した「反撃能力」。日本の防衛はどのように変わるのか。国会で答弁を続ける「岸田総理のコトバ」を徹底検証しました。
■南西諸島で防衛力強化 石垣駐屯地に弾薬搬入
3月18日、沖縄県・石垣市。新設された陸上自衛隊・石垣駐屯地に弾薬を積んだとみられるトラックが続々と入っていきました。
政府は、2016年に与那国島に自衛隊駐屯地を開設して以降、南西諸島の防衛力強化を進めてきました。念頭にあるのは、軍事力を拡大させる中国などの動向です。
■新たに手にした「反撃能力」 首相はどう説明?
去年12月に閣議決定された安全保障関連3文書。文書には、敵の弾道ミサイル攻撃などに対処するため、ミサイル発射拠点などをたたく「反撃能力」の保有も明記されました。
通常国会では、この「反撃能力」の具体的な中身をめぐって、野党が岸田首相を追及しました。
〇立憲民主党・岡田幹事長
「いくつか具体例を挙げて説明してもらいたいんですよ。 抽象論の世界じゃないんですよ」
しかし、岸田首相からは「あるコトバ」が。
〇岸田首相
「“手の内”を明らかにするということになるわけですから」
「安全保障における“手の内”を 明らかにすることになるわけで ありますから」
「手の内は明かせない」と繰り返した岸田首相。しかし、追及の中でその一部が明らかになりました。
■岸田首相のコトバ①:反撃能力 どんな装備?
〇岸田首相
「トマホークについては、400発の取得を目指すということを申し上げています」
反撃能力の手段の1つとして使われる巡航ミサイル、トマホーク。アメリカから購入する「数」を「400発」と明らかにしました。
■岸田首相のコトバ②:反撃能力 いつ使う?
一方、どのような場合に使うかという「基準」についても、首相は答弁しました。
政府はこの基準について「相手が武力攻撃に着手した時点」だとしています。ただ、野党は、「相手の着手」がいつなのか、という認定を誤れば、国際法が禁じる「先制攻撃」だとみなされると、追及しました。
〇立憲民主党・杉尾秀哉議員
「相手国がミサイルの発射を準備する段階から自国領土への着弾まで、いろんな段階がありますけど、どの段階で着手とみなすことができるのかお答えください」
〇岸田首相
「相手方のミサイルの発射、特に第一撃を事前に察知し、その攻撃を阻止することは難しくなってきている」
反撃は、事実上、相手からの最初の攻撃を受けたあとになる、との認識を明らかにしました。
相手の攻撃への「抑止力」が反撃能力を持つ最大の狙いだったはず。岸田首相のコトバ通りなら「抑止力になっていないのでは」との批判の声もあがっています。
■岸田首相のコトバ③:専守防衛に反しない?
一方、憲法9条を象徴するコトバ、「専守防衛」をめぐっては、首相はこのように答えました。
〇日本共産党・志位委員長
「専守防衛という戦後の歴代政権 が掲げてきた安全保障政策を根底から覆す極めて重大な内容となっています。日本国憲法に照らして許されるのか」
〇岸田首相
「憲法、国際法、国内法の範囲内
で行うものであり、専守防衛を投げ捨てるようなものではない」「防衛3文書の中にまずは外交というものを掲げてこの地域の平和と安定に貢献する」
■“政治の覚悟” 国民に向けての説明は?
こうした「岸田首相のコトバ」について、専門家は。
〇遠藤乾・東京大学大学院教授
「国家安全保障戦略の中でも『外交』というのを最初に挙げて、軍事が先にありきということではなくて、外交努力をきちんとしながらという構えをとっていること。これは評価できるのではないかなと思います」
一方で、“政治の責任”については。
〇遠藤乾・東京大学大学院教授
「戦後の安全保障政策を専守防衛から相手を脅しつける
というところに転換しているのだという自覚を(政治が)持つこと。どのように政治自体が自制をしていくのか、国民に求めるだけじゃなくて、自分たちがどういう覚悟でやってるのかというのをもう少し率直に国民に語りかけるべきだろうなと思っています」
反撃能力を保有することで何が変わるのか。岸田首相には国民に伝わるコトバが求められています。
(2023年3月18日放送『news every. サタデー』より)
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