【手術現場を密着】九州大学病院「iPS細胞」活用 心臓病患者に新たな可能性
九州大学と大阪大学のグループは14日、iPS細胞を使った心臓手術を安全性と有効性を検証する治験として実施したと発表しました。「news every.」は、手術現場を密着取材しました。心臓病の患者にとって、新たな可能性となりそうです。
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九州大学と大阪大学のグループは14日、iPS細胞を使った心臓手術を、安全性と有効性を検証する治験として実施したと発表しました。
九州大学病院 中村雅史病院長
「日本全国の心不全で苦しむ患者が受けることができるように。その一端になればと」
この手術は心臓病を患う人にとって、“新たな治療法”となることが期待されています。私たちは、九州大学病院で行われた手術の一部始終に密着しました。
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福岡市にある九州大学病院。ベッドには心不全の患者・岡田さん(50代・仮名)が座っていました。働き盛りの39歳の時、心筋梗塞を発症しました。その後、手術などの治療を受けましたが、心臓の機能は改善せず、制限された生活を送ってきたといいます。
岡田さん(仮名)
「長時間、仕事をすると体が疲れる。会社には『残業を抑えてくれ』と頼んでいます」
岡田さんの心臓のエコー画像を健康な成人の心臓と比較すると、岡田さんの心臓は縮む力が小さいことがわかり、正常の3分の1以下まで低下しているといいます。悪化すると、心臓移植しか道がなくなるおそれもあります。
岡田さん(仮名)
「普通に、皆さんみたいに健康な状況になればいいなと。少しでも長く生きたい」
そんな時、iPS細胞を使った手術を受けられることになったのです。まず、さまざまな臓器などの細胞に変化する「iPS細胞」を、心臓の筋肉の細胞「心筋細胞」に変化させます。
そして、厚さ0.1ミリ程度の「心筋細胞シート」を作製します。このシートを患者の心臓に貼り付けると、心筋の再生が促され、弱った心臓の機能が回復することが期待されているのです。この治験は、岡田さんを含めると8人が受けることになります。
手術前日の1月、九州大学病院で大きな動きがありました。手術で使われる「心筋シート」を作製できるのは、大阪にある施設1か所だけ。そのため、手術前日に大阪からシートが運ばれてきたのです。
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そして、手術当日を迎えました。車いすで手術室に向かう岡田さんは、緊張した様子でした。同じころ、心筋シートも手術室に運ばれました。岡田さんの心臓に貼るのは、直径4センチほどの3枚のシートです。この手術は、九州大学と大阪大学の医師によって行われました。
心筋シートは、機能が低下している心臓へ。慎重に1枚ずつ、心臓に乗せていきます。「接着剤」の役割を果たす液体をかけて、心筋シートを心臓に固定しました。手術は約1時間半で終わり、手術室には拍手が鳴り響きました。
岡田さんを担当する九州大学病院・心臓血管外科 塩瀬明教授
「ある程度、健常の方と同じような生活ができるようになれば、ご本人にとっても非常にうれしい」
今後、重症化を食い止める治療の1つとして、広く行われることを期待しているといいます。
手術から1か月経過した14日、岡田さんは退院の日を迎えました。研究グループによると、手術後の経過は順調だということです。
岡田さん(仮名)
「自分(の手術)がいいきっかけになれば、同じ苦しみ(の人)がちょっとでも少なくなればいいかな」
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iPS細胞を使った心臓の再生医療における安全性などが確認されれば、研究グループは国への申請・承認を経て、来年から再来年に一般的な治療としての実施を目指すとしています。
(2023年2月14日放送「news every.」より)
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