【ウクライナ侵攻】”戦地の現実”とは「感覚がまひする異常な世界」
印象に残る2022年の取材を特集。日本テレビ国際部・ロンドン支局の古谷朋大支局長が、ロシアのウクライナ侵攻を振り返ります。キーウ近郊の町で出会った1人の男性が忘れられず、そのシーンを写真に残しています。5回の現地取材で見た、戦地の現実とは。
■NATO加盟巡り…ロシアと対立
小髙茉緒アナウンサー
「2月末から侵攻が始まりました」
古谷支局長
「その時、私はウクライナの西部にいましたが、2月24日の早朝にハルキウとかキーウの郊外で空爆を受けている映像が入ってきました」
今年2月24日に始まった、ロシアによるウクライナへの侵攻。背景の1つにあるのは、欧米諸国の軍事同盟であるNATO(北大西洋条約機構)への加盟を望むウクライナと、それを阻止したいロシアとの対立でした。
■4月にウクライナ入り…直面した惨状
古谷支局長は、既に1月末からウクライナで取材を始めていました。
「取材した人たちがいる場所がものすごい炎の火柱を上げて空爆を受けていたので、一体彼らはどうしているかなと、家族は彼らは無事なのかなということが、一番最初に頭に浮かびました」と振り返ります。
ロシアの侵攻直後、一度避難した古谷支局長は、4月に再びウクライナに入りました。その時、戦地の惨状を目の当たりにしました。
古谷支局長
「本当に目の前に、手がない足がない、服着てないみたいな遺体がゴロゴロ(置かれている)。そういう現場を見て、かなり(感覚が)まひするという感じで、極めて異常な世界でした」
■棺の横で…打ちひしがれる1人の男性
多くの民間人が犠牲になった、首都キーウ近郊の町に入った古谷支局長。戦いの爪痕が残る市街地で出会った、1人の男性が印象的だといいます。
古谷支局長
「4月に、ものすごく被害を大きく受けたボロジャンカという町に入りました。その際に撮った(男性の)写真があります」
「空襲を受けた建物から、この男性の息子さんが遺体で発見されました。しかし戦争の真っ只中なので、お葬式をやる場所もなく、自分の車に棺を乗せて、その横にたたずんでいました」
元々は1つだった建物は、爆撃を受けて真ん中だけ崩れ落ちました。男性の息子は、この崩壊した建物の下から見つかりました。
古谷支局長は「おそらくいろんな複雑な感情を持っていたと思うんですけれども、息子を失った悲しみで打ちひしがれているという風に見えました。非常に悲しいシーンでした」と話します。
多くの民間人が犠牲になっているウクライナ。大切な人を丁重に弔えない現実を物語る1枚でした。
■戦地での取材に付きまとう「葛藤」
古谷支局長
「こういう人を取材するべきかどうか、難しいところがあります。本当は話を聞きたいのですが、とても声をかけられる状況ではなかったですし、ほとんど周りの人が声をかけても反応はなかったですし」
ウクライナでの取材は5回を数える古谷支局長。戦地での取材は、常に葛藤があったといいます。
小髙アナウンサー
「これからどんなことを伝えていきたいか、この戦争を通して思ったことはありますか?」
古谷支局長
「僕らが第一線にいて伝えることと、(視聴者が)受け取ることは、少しやはり温度差があります。僕らがすごく熱心に熱量を持って現場で取材し続けないと、おそらくこの戦争というのは何か忘れられていくんだろうなと」
「我々は大量の避難民を見ているし、苦しい生活を続けている一般民を見ています。そういうところにスポットを当てていかなきゃいけないなと(思います)」
(2022年12月21日放送「Oha!4」より)
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