【解説】「質問権」ついに行使…組織運営や財政収支 “統一教会”どこまで実態解明?

【解説】「質問権」ついに行使…組織運営や財政収支 “統一教会”どこまで実態解明?

【解説】「質問権」ついに行使…組織運営や財政収支 “統一教会”どこまで実態解明?

世界平和統一家庭連合、いわゆる“統一教会”の調査について、政府が本格的に着手しました。

◇前例のない「質問権」
◇養子縁組745件
◇救済新法「役に立たない」の声も

以上の3点について詳しくお伝えします。

■「意思決定」「資金の流れ」…解明狙う
永岡文部科学相は22日の会見で「12月9日金曜日を期限として、旧統一教会に報告を求めることとして、本日通知を発出することとしています」と述べ、初めて「質問権」を行使したことを発表しました。教団に質問が郵送され、回答期限は来月9日です。

この「質問権」は、オウム真理教による一連の事件の後、宗教法人法改正で1996年にできた規定です。文化庁が宗教法人に質問して、業務に関して報告を要求できるというものです。今回、文化庁は教団に対し書面を送り、「団体の組織運営や財産・収支に関する事項について、報告を求めるかたちで調査を開始する」としています。

答えなかったり、虚偽の報告をしたりした場合は、「10万円以下」の過料が科されということです。その質問の内容について、担当者は次のように話しています。

文化庁宗務課長
「具体的な質問事項につきましては、一つは組織運営に関する事項について、もう一つが、財産収支に関する事項についてたずねていくと」

――ボリュームですが、例えばA4用紙何枚くらいとか

文化庁宗務課長
「すぐに答えられる量ではない。かなりのボリュームのある内容を聞いています」
この調査で、組織としての意思決定の仕組みや、資金の流れを解明するのが狙いです。例えば、教団や信者の不法行為などを認めた「民事判決」は「22件」把握されていて、この中で、“統一教会”であることを隠して勧誘し、多額の献金をさせたという事例もあります。

不法行為について、教団からの回答で「組織性」、「悪質性」、「継続性」を示す十分な情報や証拠が集まれば、文化庁は、速やかに裁判所に対し解散命令の請求を行いたい考えです。

もし解散命令が出たら、教団は宗教法人格が剥奪され、税制上の優遇も受けられなくなります。

今回の質問権による調査は、あくまで教団側の協力に基づくものであるだけに、実態がどこまで明らかになるかは不透明です。

■厚生労働省と東京都も…“養子縁組”めぐり教団に質問書
教団をめぐるもう一つの問題でも、新たな動きがありました。

加藤厚生労働相は、信者の間で行われている“養子縁組”について、東京都と共同で教団に質問書を22日、送りました。回答期限は来月5日です。

この問題をめぐっては、信者向けの動画もあり、その中で「天から子宝の恵みを受けた祝福家庭は、その恩恵を子女の授からない祝福家庭にも、子女を分かち合う使命と責任があります。養子縁組という美しい伝統を、祝福家庭の中で受け継いでいきましょう」と呼びかけていました。

このように、教団は養子縁組を奨励してきました。教団への取材によると、信者同士の養子縁組は1981年にはじまり、その人数はこれまでに745人にのぼるということです。厚労省によると、民間の養子縁組のあっせんを反復・継続して行う場合は、都道府県への届け出が必要となります。

元信者らへの支援活動をしている弁護士は、「信仰に基づく養子縁組が、『養子に出すという行為ありき』で、組織的に行われている」と指摘しています。

こうした状況から、厚労省と東京都は、今回の質問書で、「あっせんの有無」や、関連して「信者から金銭の授受があるか」などを尋ねます。

教団はこれまでの取材に、「信者同士の個人的なつながりなどで、それぞれの養子縁組が決まっている」と答えており、“あっせんなどを一切行っていない”という見解です。今回は任意の行政調査ですが、加藤厚労相は、「真摯に事実を回答してもらいたい」と話しています。

■新法案の成立目指すも…弁護士ら「ほとんど役に立たない」指摘
そして、政府が同時に検討を進めているのが、被害者救済に向けた新たな法案作りです。今国会での成立を目指していますが、その概要をめぐってさまざまな声が上がっています。

被害者対策に取り組んでいる「全国霊感商法対策弁護士連絡会」の弁護士らは、「加害行為の実態に即していない」「被害者救済のためには、ほとんど役に立たないもの」などと強い口調で指摘しています。

例えば、その新法では、「寄付の勧誘行為として、個人を困惑させてはならない」「借り入れや居住する建物などの処分により、寄付資金の調達を要求してはならない」などとなっていますが、弁護士らが指摘しているのは次の点です。

「正体を隠して長期に働きかけることで献金が必要と思い込ませる実態があり、信者は困惑せずに献金していることが多い」ということです。そのため、「正体を隠した勧誘方法そのものを正面から規制すべき」と指摘しています。

また、資金調達についても、「借金や自宅の売却などに限らず、重要な財産を寄付して本人・家族の生活を破綻させるような行為についても、一定の制限をかけるべき」などとして、弁護士らはこのような内容を盛り込むように強く求めています。

政府は、来月10日までの今の国会中に法案を成立させたい考えで、与野党の議論は続いています。

   ◇

文化庁は、調査を行う宗務課の人員を、これまでの8人から38人に今月増員して対応にあたっています。それぞれの質問に教団がどこまで詳しく回答をするのか次第で、今後の流れが決まります。
(2022年11月22日放送「news every.」より)

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