【解説】1ドル=150円台に…家計負担「8万6462円増」試算も 節約方法・“抜本的”対策は
1ドル=150円を突破し、円安に終わりが見えない状況が続いています。この状況が続くと家計への負担がいくら増えるのか、具体的な試算も出てきました。
●31年ぶりの上昇率
●年間8.6万円負担増?
●ガス代も…節約ワザは
以上のポイントを中心に詳しく解説します。
■円相場ついに1ドル=150円台に… 「消費者物価指数」上昇幅が31年ぶりに3%突破
円相場は、20日に大きな節目である1ドル=150円を突破し、21日も150円台を維持しています。今年初めに比べて、3割以上も円安が進み企業や家庭への影響も深刻となっています。政府や経済界からも“小手先ではない対応”を重視する声が上がっています。
一方、21日に物価を巡るデータも発表されました。家庭で消費するモノやサービスの値動きを見る「消費者物価指数」は、変動の大きい生鮮食品を除き、去年の11月以降ずっと基準の100を超え物価が上がり続けています。
9月の指数は102.9ということで、去年の9月よりも3%上昇しました。上昇の幅が3%を超えたのは、消費税引き上げの影響を除けば31年ぶりで、歴史的な急激な物価上昇が続いているということになります。
■“150円台”続くと… 家計負担「8万6462円増加」試算も
円安が止まらない中、どれくらい家計の負担が増えるのでしょうか。
みずほリサーチ&テクノロジーズの酒井才介主席エコノミストの試算によると、円相場がこのまま1ドル=150円で推移した場合、政府による物価高対策を含めても、今年度、2人以上の世帯における家計負担額は、昨年度と比べ平均で8万6462円増加するといいます。
世帯収入別に見ると、負担額の金額自体は収入が上がるほど大きくなります。負担増の内訳では食料とエネルギーが大半を占めており、これらは日々の生活に欠かせない生活費です。低収入世帯ほど収入全体に占める生活費の割合が大きいため、それだけ打撃が大きくなります。
■来月、大手都市ガス3社が“値上げ”
さらに家計への負担を増やす悲報も入りました。
大手都市ガス3社は、来月11月分のガス料金を今月10月よりも値上げします。標準的なガス使用量の家庭で、東京ガスは10月に比べ286円、東海エリアの東邦ガスは321円、西部ガスは232円値上げします。大阪ガスは今月と同じです。
この値上げは、都市ガスの原料となるLNG=液化天然ガスの価格がウクライナ危機や円安の影響で上がっているためです。原料の輸入価格が上がっているため、12月分についても各社値上げの見通しです。
■物価高と戦う…“節ガス”の方法は
では、物価高・円安の中、少しでも生活を守るにはどうすればいいのでしょうか。
東京ガス都市生活研究所の「ウルトラ省エネブック」による、“節ガス”方法を紹介します。ガスといえばキッチンとお風呂です。まずは鍋を火にかける時の節ガスワザは、次のようになっています。
(1)鍋にふたをする
鍋を火にかける時、ふたをするということです。熱が逃げないので、ガスの使用量を減らすことができます。年間で620円ほど節約できるといいます。
(2)火加減
炎は、鍋底からはみ出さないように使う方がいいそうです。炎がはみ出した部分は鍋には伝わらず、無駄になるといいます。強火ではなく鍋からはみ出さないように中火を意識すれば、年間で1062円の節約になるということです。
(3)大きな鍋底のお鍋で料理
目からうろこの節ガス方法ですが、鍋底が平らで大きいものだと、効率よく炎の熱が鍋に伝わるということです。同じ1リットルの水を強火で沸かす時でも、16センチの鍋底のものよりも24センチの鍋底のものを選んだ方が、年間で787円節約できるといいます。
続いて、お風呂の“節ガス”方法です。お風呂でも「ふた」がポイントになります。
(1)ふたを閉める
お風呂を沸かす時や入浴後には、お風呂のふたを閉めます。これで年間2436円の節約になります。
(2)家族で続けて入浴
時間をあけずに続けて入浴すれば、お風呂を沸かしなおす必要がなくなります。これで1914円の節約になるということです。
■個人の節約に限界 抜本的な対策とは…
とはいえ、個人での節約にも限界があります。先ほどの酒井エコノミストは為替介入や補助金などの対症療法に加え、より抜本的な対策が急務だと強調しています。
具体的には、労働者の賃上げをはかる、再生可能エネルギーなどの比率を上げて燃料の輸入依存度を引き下げるといったものです。これらの対策は効果が表れるまでに時間がかかるものの、国が主導して対症療法と同時並行で進めることが必要だと話していました。
◇
今回の円安と資源高のダブルパンチは、生活必需品の多くを輸入に頼っている日本の脆弱(ぜいじゃく)性を一層明らかにした形です。これを機会に賃金体系やエネルギー構造の転換といった抜本的な対策への着手が待ったなしと言えそうです。
(2022年10月21日放送「news every.」より)
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