「ブレーキ利かない」運転手 “フェード現象”か…遺族「何度も電話」 観光バス横転(2022年10月14日)
静岡県で起きた観光バスの横転事故で、死亡した女性の遺族が取材に応じ、苦しい胸の内を話しました。バスの運転手は、今回のコースを運行したのは、初めてだったということが分かりました。
■バス横転 1人死亡…遺族「旅行に行こうと約束」
クラブツーリズム・酒井博社長：「この度は当社が企画したご旅行中にバスの横転事故が発生し、お客様の1人がお亡くなりになり、多くのお客様が負傷される事故が発生致しました。旅行主催会社と致しまして、誠に申し訳なく、深くおわび申し上げます」
突然の事故で亡くなった74歳の乗客・枝川恵美子さん。13日夜、枝川さんの夫がANNの取材に答えました。
枝川恵美子さんの夫：「きょうも朝からバス停まで見送って、バスに乗る姿を見た。結婚してから50年で、今度記念の旅行に行こうと2人で話していた」
■「ふじあざみライン」つづら折りカーブ続く“難所”
乗客乗員36人を乗せたバスの横転事故は、なぜ起きたのでしょうか。
フロントガラスがめくれ上がり、反対車線を塞ぐように横転したバス。現場は、富士山の静岡側に位置する、県道150号。5合目へ通じる、通称「ふじあざみライン」です。
バスは旅行会社が企画したツアーで、埼玉県から出発し、富士山5合目を散策した後、この道路を下る途中で事故を起こしました。
事故があったふじあざみラインは、つづら折りのカーブが続く道です。
実際の道を撮影した映像を見ると、カーブを抜けると、またすぐに次のカーブが迫ります。
撮影者：「アップダウンが激しい所。かなり気を付けないと、下りは下りで速度が速くなってギアを変えたり、それでも（速度が）落ちなくて、カーブの手前でブレーキを踏まないといけないほどの勾配」
しかし、事故が起きたのは、比較的緩やかなカーブでした。バスは、車道左側ののり面にタイヤが乗り上げ、横転したとみられます。
バスを運転していた野口祐太容疑者（26）は、過失運転致傷の疑いで現行犯逮捕されました。
■運転手「ブレーキ利かない」…“フェード現象”か
バス横転のおよそ5時間半後に開かれた旅行会社らによる会見。事故直前、バスに起こっていた異変が語られました。
酒井社長：「添乗員が『ドライバーさんがブレーキが利かないとおっしゃっていた』」
富士山5合目から下り坂を走行中、バスのブレーキが利かなくなっていたといいます。
その原因について、専門家は“ある現象”が起きていた可能性を指摘します。
事故鑑定人・中島博史氏：「フットブレーキに頼った運転をしていたとすると、“フェード現象”が起こる可能性」
フェード現象とは、フットブレーキの使い過ぎで摩擦力が減り、ブレーキの利きが悪くなる現象です。
朝の検査時には、バスに異常はなく、事故直前、富士山5合目も予定通りの時間に出発したといいます。
5合目から事故現場までは、およそ5.5キロ。この間にブレーキの異常が起こることはあり得るのでしょうか。
中島氏：「十分起きると思います。5.5キロの間、フットブレーキに頼った運転をすれば、富士山の5合目でかなりの傾斜があったと思います。その間、フットブレーキを頼った運転をすれば、フェード現象は起きると思います」
■入社1年3カ月の運転手 “難所コース”初運行
バスを運転していた野口容疑者については、次のように答えました。
美杉観光バス・吉田典弘社長：「（Q.訓練は行っていたか？）富士山で研修したということは分かりませんが、他の山坂の峠道に行って、研修は致しております」
入社して1年3カ月の野口容疑者。事故を起こした道の運転経験がなかったことが、関東運輸局の監査で判明しています。
国土交通省は、今回の事故を特別重要調査の対象にあたると判断しました。
■旅行会社「今後もツアー実施」…遺族「何度も電話」
しかし、今後も旅行会社はバスツアーを実施する予定があるとしています。
酒井社長：「（Q.あす以降の中止や延期は考えていないのか？）はい、安全を確認して、しっかりと安全確認できれば出発はさせて頂きたい」
亡くなった枝川さんの夫は、次のように話しました。
枝川恵美子さんの夫：「妻は明るい人で、今回の旅行も妻が計画して、友達を連れて行った。何度も妻に電話をしたが、つながらなかった。まだ震えが止まらなくて、受け止められない」
（「グッド！モーニング」2022年10月14日放送分より）
[テレ朝ｎｅｗｓ] https://news.tv-asahi.co.jp/a>
