【“統一教会”と自民議員】“巨人の星”替え歌で激励「総裁は皆様の母」礼賛
安倍元首相の銃撃事件以降、“統一教会”と政治家との関わりが次々と浮き彫りになっています。関連団体のイベントに実行委員長として元閣僚が参加し、教団が複数の自民党議員へ選挙協力していたことも判明。互いに何を頼っていたのでしょうか。
■下村氏が文科相時代に「名称変更」
自民党・安倍派の幹部である下村博文衆院議員が文部科学大臣を務めていた2015年、いわゆる“統一教会”の名称が変わった件を、野党が追及しています。下村氏は21日、報道陣に対し「全く関わっていません」と自身の関与を否定しました。
共産党の宮本徹衆院議員は、「なぜ、名称を変更したのかという理由のところは真っ黒で…」と指摘します。名称変更の経緯について文化庁に情報開示を請求した結果、黒塗りの資料が示されました。
教団が提出した文書に至っては、まるごと真っ黒でした。全てを閲覧できるよう交渉中だといいます。
宮本氏
「(教団について)被害を広げないために名称変更は認めない、ということでやってきたわけですから、政治の圧力でゆがめられていたということになっていたら、本当に極めて重大な問題だと思います」
教団は27日、名称変更について「世間の批判をかわすために名称を変えたかのような批判は、事実無根の的外れな臆測、決めつけにすぎません」とコメントを発表。「正体隠し」ではなく、かねて名称変更を望んでいたなどと反論しました。
下村氏をめぐっては、別の関わりもあります。教団の関連団体が発行する月刊誌で少なくとも3回表紙を飾り、大臣室でインタビューを行った写真が掲載されていました。
■元閣僚らが出席…「世界平和」の催し
安倍元首相の銃撃事件以降、霊感商法などのトラブルが相次ぐ教団と政治家との関わりが、次々と浮き彫りになっています。
香川県で去年8月に開かれた、いわゆる“統一教会”の関連団体のイベント。当時、デジタル担当大臣だった自民党の平井卓也衆院議員、同党の三宅伸吾参院議員、現在の官房副長官の磯﨑仁彦参院議員が、「世界平和への道」と書かれたタスキをかけていました。
イベントの実行委員長だったという平井氏が壇上で挨拶する場面も。このイベントは、参加者が自転車に乗り、リレー形式で日本を横断するというもので、映像で「世界平和のために汗を流す青年たちの姿が各地で注目を集めています」と紹介されていました。
ホームページによると「故文鮮明(ムン・ソンミョン)総裁が世界中のすべての人々を物理的に結ぶという国際平和高速道路を提案しました」と、教団創始者の発案を強調していました。
平井氏の事務所は「出ました。実行委員長でした」、磯﨑官房副長官の事務所スタッフは「(本人は)出席していましたよ」、三宅氏の事務所スタッフは「イベントに参加したのは事実です」とそれぞれ回答しました。
同じ関連団体をめぐっては、二之湯国家公安委員長も4年前のイベントで実行委員長を務めていたことが明らかになっています。
■「マザームーン」として総裁を礼賛
自民党の山本朋広・元防衛副大臣は2017年5月、「私の母は私にとっての母でしかありませんが、マザームーン(韓鶴子総裁)は、今日お集まりの皆様にとっての母であります。皆様からマザームーンに対しての感謝の思いがマザームーンへ伝わる」と礼賛しました。
2019年、教団トップの韓鶴子(ハン・ハクチャ)総裁が登場した、愛知県常滑市での集会では「約200名におよぶ地方議員の皆様にもご参加いただいております」と紹介されました。
この前日、教団の関連団体が主催したイベントに姿を見せたのが、自民党の北村経夫参院議員です。
■内部通達で…当選は「死活問題」
北村氏をめぐっては、教団による選挙協力が浮上。初当選した2013年の参院選の際には「首相からじきじきこの方を後援してほしいとの依頼があり」という内部通達が出ました。入手したフリージャーナリストの鈴木エイトさんによると、「この方」が北村氏です。
内部通達では「参院選後に当グループを国会で追及する運動が起こるとの情報があり、それを守ってもらうためにも今選挙で北村候補を当選させることができるかどうか、組織の死活問題です」とも書かれていました。
北村氏の2019年の選挙戦では、安倍昭恵夫人も応援に駆けつけ、「安倍政権が苦しい時もずっと北村先生にはお支えをいただいてまいりました。安倍政権の中でなくてはならない存在」と訴えました。
■元スタッフが証言…関連団体から派遣
北村議員の選挙スタッフとして働いていた近藤将勝さんは、教団の関連団体から選挙スタッフが派遣されていたと証言します。
近藤さん
「常駐している女性がいて、その女性との会話の中で実は『世界平和連合』から派遣されていた方だと分かりました。名刺ファイルにその女性が『世界平和連合』の所属を示す名刺があったことがはっきり確認できました」と振り返ります。
「(教団の関連団体は)ほとんどが好感触な反応で、特に平和連合や国際勝共連合の方々は、明るい声で『応援しています。絶対勝ちますよ』と話をされていました」
また、教団から北村氏の選挙事務所に、教会で講演をするよう依頼するファクスが送られてきたといいます。その後、近藤さんは事務所を辞めました。
「旧統一教会系の団体が選挙運動に関わっているということはおかしくないかと。なぜその声が事務所の人から出ないのかと私はすごく疑問を感じています」と近藤さん。支援があったのか北村氏の事務所に確認すると、「そうした事実はありません」と否定しました。
■「応援歌」作り…自民議員の選挙支援
自民党・岸田派の小鑓隆史参院議員も、関係が指摘されています。ツイッターでは「世界平和連合の皆さんが隆和会という後援組織を立ち上げて頂きました。応援歌まで作って下さり感謝」と投稿していました。
6月7日にも「他会場もオンラインで繋いでの隆和会の国政報告会。巨人の星の替え歌で激励頂き、感謝です」とアップしていました。
関連団体は取材に対し、「小鑓氏への選挙支援は事実」と回答しました。一方の小鑓氏側は「お相手があることですので、個別のお問い合わせには回答を控えさせていただいております」などとコメントしました。
■ナゼ?自民党議員に選挙協力
教団と政治家、双方の取材を続けているフリージャーナリストの鈴木エイトさんは、「ともに関係を隠しておきたかったのだろう」との見方を示しました。
鈴木さん
「教団側も政治家との関係を広告塔のように、外向けには一切宣伝していません。こんな偉い先生がうちの集会に来て挨拶してくれる。じゃあうちの団体やっぱりちゃんとしたところなんだという動機づけになる。内部統制の手段として教団は政治家を使っていました」
「私が(教団側に)取材に行った時も、政治家との関係を絶対悟られないように暗幕を張ったり(していました)。(政治家側も)“統一教会”がどういう団体か分かっているので、関係を指摘されると外聞が悪い。批判を受けると重々分かっていたので」
では、なぜ教団を頼るのでしょうか?
自民党本部の職員によると、国会議員には1人あたり年間1000人の党員獲得がノルマとして課され、達成できなければ足りない人数あたり2000円を払う必要があります。
自民党関係者は「党員を十分に集められない議員が“統一教会”にお願いして、信者に党員になってもらっている」と明かします。
■声を詰まらせ…教団会長が「訴え」
教団が批判にさらされる中、田中富広会長は17日、「献金は宗教において大切な行為です。誇るべき行いです」「もし揺れる心があるなら、あなたがいつも共にあることを悟らせてください」と信者に訴えました。声を詰まらせる場面もありました。
田中会長がかつて、教団の友好団体の幹部だった際に部下だったという元信者(38)は「その涙は本当なのかなと(思いました)。“統一教会”の問題は昔からあったわけですから、何を今さら言ってるんだろうなという感じでしたね」と冷ややかに受け止めます。
田中会長からは当時、指示があったといいます。「『勉強会に参加しなさい』『伝道を行いなさい』と。伝道とは勧誘のことですね」と鈴木さんは言います。
(2022年7月27日放送「news zero」より)
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