【解説】上皇さま「心不全」と診断 どのような症状? 退位後も変わりない“国民への思い”とは

【解説】上皇さま「心不全」と診断 どのような症状? 退位後も変わりない“国民への思い”とは

【解説】上皇さま「心不全」と診断 どのような症状? 退位後も変わりない“国民への思い”とは

宮内庁は26日、上皇さまが心不全と診断され、上皇后さまは目のレーザー手術を受けられたと発表しました。今後の治療について、専門家に聞きました。

「右心不全とは」、「今後の治療は?」、「ご夫妻の近況」、以上の3つのポイントについて、詳しく解説します。

■上皇さま「右心不全」と診断 現在は改善
2021年に米寿を迎えられた上皇さまは現在88歳、上皇后さまは87歳です。

宮内庁は26日、上皇さまが「右心不全」と診断され、上皇后さまは右目のレーザー手術を受けられたと発表しました。

上皇さまは今年4月から体重がやや増加し、6月末の健康診断では胸に水がたまるなどの所見が認められました。

そして、24日の検査で「三尖(さんせん)弁閉鎖不全による右心不全」と診断されました。この間、薬の服用を続けられ、改善しつつあるということです。

上皇后さまは2019年6月、左右の目の白内障手術を受けられました。その後、手術で入れた右目のレンズの後ろにある袋が濁る「後発白内障」と診断されたため、レーザー切開術を受けられました。経過は良好だとしています。

■「三尖弁閉鎖不全」どのような症状? 
「三尖弁閉鎖不全による右心不全」とは、どのような状態でしょうか。難しい医療用語ですが、簡単に説明します。

心臓には4つの部屋があります。今回、右心房と右心室の間にある弁「三尖弁」に問題があるとわかりました。

三尖弁には、右心室から右心房と血液の逆流を防ぐ役目があります。三尖弁がきちんと閉じなくなり、一部の血液が逆流して、うっ血、つまり血の流れが悪くなりがちな状況になっているということです。

ただ、上皇さまは胸の痛みや他の自覚症状もないとのことです。

以前、上皇さまが受けた心臓のバイパス手術との関係について、医師団は「一番心配した」ということです。今回は三尖弁の問題が原因で、以前の手術とは「今の時点では関係ない」と話しているということです。

また、心不全というと、「急性心不全のような危険な状況が起きるのでは」と心配してしまいます。全身に血液を送る働きがあるのは心臓の「左側」です。今回、問題が起きたのは「右側」で、心臓の働きはしっかり保たれているとのことです。上皇さまに手術や入院の予定はないということです。

■今後の治療は? 専門家に聞く
今後、どのような治療が行われるのでしょうか。

大阪大学大学院の澤芳樹教授は、「今後も投薬治療で、引き続き様子を見るのではないか」とした上で、一般論として、「もし悪化すると、肝臓にもうっ血が及んで、肝臓の機能にも影響してくる。弁が閉じないような状況が続けば、手術など外科的な治療も考慮する必要がある」との見方を示しました。

■上皇ご夫妻 最近の様子は?
今回、上皇ご夫妻は体調について公表されましたが、6月17日には沖縄復帰50周年の記念特別展を鑑賞されていました。

ご夫妻は、当時の佐藤栄作首相が1965年8月、戦後の首相として初めて沖縄を訪問した際の日記などをご覧になりました。担当者が「非常に重要な資料としてご紹介する、佐藤栄作首相の日記でございます」と説明すると、上皇さまは「これがね」と応じられました。

また、上皇ご夫妻は6月9日、東京国立博物館を訪問し、沖縄復帰50年記念特別展「琉球」 を鑑賞されました。この鑑賞は、上皇さまに「少しお疲れの様子がみられる」として、一度延期されていました。ご夫妻は手をつなぎながら、長く思いを寄せてきた沖縄の特別展を見て回られました。

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上皇ご夫妻は今年4月、皇太子時代に長年過ごした思い出の地・赤坂御用地に引っ越されました。

引っ越し後、上皇さまの最初の外出は「ハゼ研究」でした。魚類の研究者として世界でも知られる上皇さまは、特にハゼの研究をライフワークとされています。

上皇さまはこれまでにハゼの新種を10種発見し、2021年も2種の新種の論文を発表されました。「アワユキフタスジハゼ」、「セボシフタスジハゼ」は、上皇さまが名付けられました。

■上皇ご夫妻の“国民への思い”とは?

上皇さまは退位後、論文を発表するなど、むしろ本格的に研究に取り組んでいます。月曜日と金曜日は皇居の生物学研究所、水曜日は赤坂御用地で研究を続けているということです。

そして、上皇ご夫妻の毎日の生活はとても規則正しく、朝夕の散策を続けているということです。定時に起床し、朝食の後はご夫妻で声を出して本を読む「音読の時間」を作られているそうです。

また、新聞を読み、側近である侍従から国内外の情報について聞かれる時間も作っているということです。そして、夕食後は時にアルバムなどを見ながら、侍従との「お話タイム」も日課にされているということです。

今回、心不全の診断を受けて、6月末から散策は短めにされているということです。

日本テレビ宮内庁担当・笛吹雅子記者は「上皇ご夫妻は、体調に何かあった時には影響があることから、『国民に必ず知らせるように』という意向を持たれていて、それは退位された後も変わりはない」と述べました。
     ◇

上皇ご夫妻は、現在も新型コロナウイルスや自然災害の発生などを気にかけられ、社会と人々の様子に思いを寄せられているということです。回復され、また元気な姿を見せられることを、国民の多くが願っていると思います。
(2022年7月27日放送「news every.」より)

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