【解説】震源から遠く離れているのに揺れる!? 「深発地震」と「異常震域」の関係性『週刊地震ニュース』
震源から遠く離れている場所が揺れる現象。
これには「震源の深さ」が関係していた? 社会部災害担当・内藤ミカ記者が解説します。
■18日~24日は震度1以上の地震が24回発生 震度3以上は3回
7月18日から24日の1週間、国内では震度1以上の地震が24回発生しました。
このうち震度3以上の地震は、3回ありました。
▼21日午後6時44分頃、福島県沖を震源とするマグニチュード4.8の地震があり、楢葉町と富岡町で震度3の揺れとなりました。
▼22日午後0時02分頃、青森県三八上北地方を震源とするマグニチュード5.3の地震があり、青森県階上町で震度4を観測。八戸市などで震度3の揺れを観測しました。
▼24日午後5時29分頃、茨城県南部を震源とするマグニチュード4.2の地震がありました。関東地方の広範囲で震度3の揺れとなっています。
■「深発地震」と「異常震域」とは?
2015年5月30日に発生した地震では、東京都心で震度4を観測しました。
神奈川県で最大震度5強、埼玉県でも震度5弱となり、各地でけが人も出ました。
この地震の震源は、東京都心から約1000キロ離れた小笠原諸島の西側でした。
この地震では関東地方をはじめ北海道から沖縄にかけて、47都道府県のすべてで震度1以上の揺れを観測。
1つの地震によって全国すべての都道府県で有感地震となったのは、震度観測が始まった1884年以来初めてのことでした。
■小笠原諸島西側での地震
震源の深さは682キロ、地震の規模はマグニチュード8.1とかなり大きく、さらに震源は太平洋プレート内の深い場所で発生しました。
その深さはなんと682キロでした。2011年に東日本大震災をもたらした東北太平洋沖地震の震源の深さは24キロ。1995年の阪神・淡路大震災は16キロ。2004年の新潟中越地震が深さ13キロ。
小笠原での地震が、ケタ違いに深いところで発生したことがわかります。
地下の深いところで発生する地震を「深発地震」と呼んでいます。
気象庁によりますと震源が非常に深い場合、震源の真上ではそれほど揺れなくても、逆に震源から遠く離れた場所で揺れを感じることがあります。この現象を「異常震域」と呼んでいます。
■「異常震域」のメカニズム
日本付近は、海洋プレートが陸のプレートの下に深く沈み込んでいます。
深い場所で地震がおきた場合、揺れの伝わり方はどうなるのか?
「マントル」と呼ばれる岩石は熱く柔らかい性質を持っています。そのため、マントルを通る地震の揺れは伝わりにくいという特徴があります。
一方で、海洋プレートはマントルに比べて固く地震波があまり減衰しない、つまり「揺れが伝わりやすい」のです。
深い場所で地震が起きると、海洋プレートを通して地震波が遠くの場所まで伝わります。その結果、震源から遠く離れた場所で揺れが大きくなります。
震央から遠くの方が大きく揺れるこの現象を「異常震域」と言います。
■「異常震域」は
“異常”ではない”異常震域”は、地震現象としてはたびたび発生していて、異常なことではありません。
通常の地震は「震源の近く」であるほど揺れが大きくなりますが、異常震域では「震源から遠く離れた場所」で揺れが大きくなり、震度を感じる場所が「通常と異なる」から異常と呼ばれています。
異常震域となった深発地震は、今月も発生しています。
7月2日、北海道の宗谷海峡を震源とするマグニチュード5.9、震源の深さ324キロの地震が発生しました。
震度分布図をみると、遠く離れた宮城県蔵王町でも震度1が観測されています。
■「深発地震」「異常震域」 起きやすい場所は?
この図は、太平洋プレートがどのくらいの深さまで沈み込んでいるのかを示したものです。
太平洋プレートは陸のプレートの下に、1年で8センチほど沈み込んでいます。
図の赤い線は深さ10キロ、緑は200キロとどんどん深くなっていて、青い線となっているあたりは深さ400キロほどまで沈み込んでいるということになります。
そこに、震源の深さ200キロ以上という深い場所で起きた地震を重ねてみます。
日本海や三重沖、小笠原諸島の周辺に青い丸があり、このあたりで震源の深い地震が起きていることがわかります。
太平洋プレートが深く沈みこんでいる場所で深発地震が発生すると、本州などの太平洋側での揺れが大きくなる、異常震域の現象が観測されるということです。
(2022年7月25日放送)
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