【フィリピン大統領選挙】ドゥテルテ大統領の後任は…“独裁者の息子”独走の理由

【フィリピン大統領選挙】ドゥテルテ大統領の後任は…“独裁者の息子”独走の理由

【フィリピン大統領選挙】ドゥテルテ大統領の後任は…“独裁者の息子”独走の理由

フィリピンでドゥテルテ大統領の後任を決める大統領選挙が、来週行われます。支持率で独走するのは、かつて独裁政権を敷いた故マルコス元大統領の息子です。独裁時代を知らない若者から支持されていますが、その理由とは、いったい何なのでしょうか。

2016年、フィリピンのドゥテルテ大統領が述べたのは――

フィリピン・ドゥテルテ大統領
「お前らが俺を殺すか、俺がお前らバカどもを殺すかだ」

過激な言動から“暴言王”とも言われたドゥテルテ大統領は、政界引退を表明し、次のリーダーを決める大統領選が来週行われます。
選挙集会へ行ってみると、アーティストが登場し、まるで“野外フェス”のような盛り上がりです。

スピーチを前に、会場から大歓声が上がるなか登場したのは、最有力候補のフェルディナンド・マルコス元上院議員(64)。

大統領選に立候補 マルコス元上院議員(64)
「フィリピン人を団結させるリーダーになりたいのです」

副大統領選に立候補したドゥテルテ大統領の娘とタッグを組み、選挙戦を展開しています。

現職の副大統領ながら、ドゥテルテ大統領と対立するロブレド氏や、元プロボクサーの国民的英雄・パッキャオ氏などを抑え、独走状態です。

大人気のワケは、若者に向けたSNS戦略です。YouTubeでは息子も出演し、親しみやすさをアピールする一方、「『私の父の時代は、インフラの黄金時代だった』と多くの人が言っています」などと、父親の実績を口にしています。

実は父親は、かつて20年以上にわたり独裁政権を敷いた故・マルコス元大統領。

反体制派への厳しい弾圧でも知られていますが、マルコス氏はSNSで、「父親の時代に国が発展した」と強調し、独裁時代の負の側面を知らない若い世代に支持を広げているのです。

マルコス氏を支持(18)
「(父・マルコス元大統領が)独裁者だったという証拠はありません」

マルコス氏を支持(18)
「マルコス候補は、特に私たち若い世代を支援してくれます。そのおかげで私たちは、よりよい将来を描けます」

しかし、独裁政権時代に弾圧された人々は不安を隠せません。

反体制派と疑われ、1980年代に9か月間、拘束をされたフェリモンさん(74)は、「当時は、皆が緊張を強いられていました。私が子供たち(若い世代)に言えることは、歴史を勉強しなさいということです」と話し、再び強権的な政治になるのではと危機感をあらわにしました。

   ◇◇◇

一方、今回の選挙で大きな争点になっているのは、ドゥテルテ大統領が進めた“麻薬戦争”の是非です。

ドゥテルテ大統領
「麻薬に手を出しているお前ら。この野郎、本当に殺してやる」

麻薬犯罪の容疑者の殺害も辞さない強硬な取り締まりで、犠牲者は数万人に上ると指摘され、ICC(=国際刑事裁判所)も捜査しています。

“麻薬戦争”で夫らを失った女性が働く、マニラ近郊の裁縫センターを訪ねました。

夫が6年前、麻薬をめぐるトラブルから、警察官に射殺されたとみられる女性の子どもは「愛すべき、とても優しいお父さんでした」と話します。“麻薬戦争”は、7人の子どもから父を奪いました。

“麻薬戦争”で夫を亡くした女性(34)
「麻薬対策には賛成ですが、殺人はやめてほしい。一番被害を受けるのは、親を失った子どもたちだからです」

ドゥテルテ路線を継承するマルコス氏は、やり方は変えるとしつつも、いまの勢いで麻薬対策を続けると訴え、ほかの候補者は、強硬な取り締まりには反対しています。投開票は、9日に行われます。
(2022年5月5日放送「news every.」より)

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