【解説】ウクライナ側が主張 “選別センター”とは…
ウクライナでは、ロシアに包囲された南東部マリウポリの製鉄所から100人以上の市民が避難しました。一方で、市内周辺には「ロシア側が“選別センター”なるものを設置して、避難した人たちを捕らえている」という情報があります。「避難バス11台が消えた謎とは」、「“選別センター”で何が?」、「ロシアが『戦争』宣言?“第3次世界大戦”か」の3つのポイントについて詳しく解説します。
■避難「第一陣」127人到着 マリウポリに残ることを決めた人も…
3日、ロシア軍に包囲されていたウクライナ南東部マリウポリのアゾフスタリ製鉄所などから避難した市民たちの「第一陣」が、約200キロ離れたザポリージャに到着しました。到着したのは127人で、製鉄所だけでなく近隣で合流した人たちも含まれているといいます。
国連などによると、今回、製鉄所から避難したのは101人でしたが、中には製鉄所から脱出できてもマリウポリに残ることを決めた人もいたということです。
避難した最年少の子供は、生後6か月の赤ちゃんだということです。避難した人からは、次のような声が聞かれました。
避難した人
「『これからは新しい人生を始めなきゃ』と言われたけど、私にはちょっと…今までの人生は清く明るいものでした。取り戻したいですけど、それは無理だとわかっているので、新たな人生を歩んでいかなければなりません…」
一方、まだ、製鉄所に残されている人も多くいるとみられます。製鉄所については「ロシア軍の攻撃が再開された」との情報もあります。
■避難バスが“選別センター”に消えた? 「立ちっぱなし」「トイレは24時間に1度」
さらに、製鉄所からとは別に、マリウポリ市からの避難も行われていて、その中で、マリウポリのボイチェンコ市長は3日、「バス11台がどこかに消えた。消えたのは“選別センター”がある場所だ」と述べました。
マリウポリからの避難のために、市内に入ってきた避難用のバスは、14台だったといいます。ところが、ウクライナ側へ出られたのは、わずか3台だったといいます。つまり、11台のバスがこつぜんと姿を消してしまったということなのです。そして、そのバスが消えたのが、“選別センター”がある場所だといいます。
ウクライナのゼレンスキー大統領は2日、自身のSNSに公開した動画で「あそこ(選別センター)ではウクライナの人々が殺され、拷問され、レイプされている。占領者(ロシア)が民間人を捕らえ人質にしたり、無料労働者として強制送還したりするのは、偶然ではない」と憤りをあらわにしています。
ウクライナ側からの情報によると、ロシアが設置した “選別センター”は、マリウポリ市内やその周辺に4か所あるされています。市民が通過して、「公務員」や「ウクライナ政府の関係者」だと「選別」された場合、拘束され拷問を受けるとしています。
中には小さな部屋が1つあり、そこに10人から15人が詰め込まれて、ずっと立ちっぱなしの状態で、食事は与えられず水だけが与えられ、トイレは24時間に1度だけ行くことが許されるという、非常に過酷な状況が続いているということです。
さらに現地メディアによると、「選別センターを通過した」という17歳の女性は、ロシア兵とみられる兵士2人の会話を聞いたといいます。1人の兵士が、もう1人の兵士に「選別に合格しなかった人に何をしたか?」と聞いたところ、「10発撃った。その後は数えることに興味を失った」と答えたということです。
■“選別センター”の意味…専門家は「反ロシア的な考えを持つ人は排除」
こうした “選別センター”を設置する意味について、笹川平和財団の小原凡司上席研究員に聞くと「プーチン大統領の真の目的は、ウクライナを『ロシア化』することなので、反ロシア的な考えを持つ人は絶対に許さない。『ウクライナ政府を支持する人や関係者は、その場で排除する』という考え方が根本的にある」と分析していました。
それに加えて、第一陣の避難に関しても、「国連や赤十字を利用して、『ロシアが民間人の避難に協力している』と国際社会にアピールするためのもので、プーチン大統領としては、その目的が果たせればよく、もともと民間人の安全などは考えていない」と指摘しています。
■市民動員のため「戦勝記念日」に「戦争」宣言する? “第3次大戦”への可能性は
こうした中、ロシアにとって大切な日である第2次世界大戦の「戦勝記念日」である5月9日まで、あと5日に迫っています。
これまでは、「この日にプーチン大統領が『勝利宣言』をするのではないか」とみられていましたが、そうではなく「『戦争宣言』をするかもしれない」という見方が徐々に高まってきています。
その背景には「市民を兵士に」という動きがあるとされています。プーチン大統領はこれまで、「ウクライナへの『軍事作戦』に徴兵された兵士は派遣しない」と言ってきました。しかし、これまで決してロシアの思い通りに入っておらず、侵攻が長引けばさらなる兵力が必要になります。そこで、ロシア国内に向けて「戦争」を宣言すれば、市民を兵士として動員できることになるという話です。
さらに、アメリカの政策研究機関である戦争研究所は3日、「ロシアはこれまでの『特別軍事作戦』ではなく、西側に対する『第3次世界大戦』として長期化する戦争を正当化しようとしている」というウクライナ側の見方を紹介しました。
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先ほどの笹川平和財団の小原上席研究員は、「ロシアが今後、第3次世界大戦を念頭に、欧米諸国が参戦してこないように、比較的破壊力の小さい戦術核を使って脅しをかける可能性もある」と指摘しています。恐怖とどう喝によって他国の支配をもくろむ指導者に世界が振り回される日々は、いつまで続くのでしょうか。
(2022年5月4日放送「news every.」より)
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