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【解説】なぜ今?北朝鮮のミサイル発射 狙いは…ウクライナ情勢も関係?
北朝鮮が24日に発射したICBM(大陸間弾道ミサイル)とみられるミサイルは、「これまでとは次元が違う脅威だ」との声もあがっています。なぜ、このタイミングで発射に踏み切ったのか、北朝鮮の核やミサイルに対する強いこだわりが見えてきました。詳しく解説します。
■北メディアはどう伝えた?「勇敢に発射せよ」“サイン”する金総書記も
25日午後、北朝鮮の国営テレビでは、ミサイルの発射に立ち会う金総書記の姿や、ミサイルが炎を噴き出しながら上昇していく様子が放送されました。
また、25日付の北朝鮮の労働新聞では、「24日、新型ICBM『火星17』の発射実験を行った」という内容で、4面にわたって写真付きで大きく報じています。発射前にミサイルの前を歩く金総書記の姿や発射の瞬間、発射後なのか軍人たちと一緒に喜ぶ様子、関係者一同の記念撮影とみられる写真などもありました。
また、一面に大きくのっていたのが、書類にサインをする金総書記の姿です。書類には「試験発射を承認する。3月24日に発射すること。祖国と人民の偉大な尊厳と栄誉のために勇敢に発射せよ!」との内容が手書きで書かれていて、「金正恩」と自らサインもしています。
■「火星17」の飛行距離“1万5000キロ超”アメリカ全土が射程に…
今回発射されたミサイルは、どのように飛行したのでしょうか。
防衛省によると、北朝鮮の平壌(ピョンヤン)から発射されたあと、最高高度6000キロまで上昇したのち、約70分後に北海道の渡島半島の西約150キロに落下したとみられています。
飛行距離は約1100キロとみられ、日本のEEZ(=排他的経済水域)に落下したのは、去年9月以来、約半年ぶりということです。
今回、発射したとされるのは新型といわれる「火星17」ですが、どのようなミサイルで、今までと何が違うのでしょうか。
今回は、急角度で高い高度で打ち上げる「ロフテッド軌道」という発射方法でした。これを通常の軌道、つまり角度を抑えてより遠くの場所を標的とした場合、弾頭の重さによっては、飛距離が1万5000キロを超えるとみられています。
これは、2017年に発射したICBM「火星15」よりも、さらに射程が伸びることになります。
平壌を中心とすると、「火星15」の射程である1万キロの範囲には、ロサンゼルスやロンドンなども含まれます。「火星17」では、さらに5000キロ広がって、アメリカのほぼ全土が射程に含まれることになります。
岸防衛大臣は25日、次のように、今回のミサイルについて強い危機感を示しました。
岸防衛大臣
「これまでの一連の発射とは次元の異なるわが国、地域、および国際社会の平和と安定に対する深刻な脅威であります」
■狙いはアメリカの譲歩? バイデン政権になり対話進まず…
では、北朝鮮には、どのような狙いがあるのでしょうか。
実は、北朝鮮は2018年4月、初めての米朝首脳会談を前に、核実験やICBMの発射実験の中止を決定していました。ところが、2020年、平壌で行われた軍事パレードで「火星17」を初めて公開したほか、去年の兵器の展覧会でも展示されたことが確認されています。
そして、今年1月には、朝鮮労働党の会議で「核実験やICBMの再開」を示唆し、今回、2017年以来となるICBM発射に踏み切りました。
中止していたICBM発射実験を再開した最大の狙いは、アメリカからの譲歩を引き出すことです。
北朝鮮としては、経済制裁を緩和してほしいのですが、バイデン政権にかわってからまったく対話が進まなくなってしまいました。そうした状況を打破するために、揺さぶりをかけたい思惑があるとみられます。
■なぜ今ミサイル発射…ウクライナ情勢も大きく関係?
では、なぜ今、このタイミングなのか、NNNソウル支局・原田敦史支局長によると、大きく2つの要因が考えられるといいます。
(1)故・金日成主席の生誕110年
来月15日は、祖父である故・金日成主席の生誕110年の節目です。金総書記はこの記念日を非常に重要視していて、10年前の100周年の際にも、事実上の弾道ミサイルを発射し、大規模な軍事パレードでさまざまな弾道ミサイルを披露しています。
今回もこの節目に向けて、新型のICBM発射の成功をアピールし、国威発揚につなげたい思惑があるということです。
(2)ウクライナ情勢も大きく関係?
もう1つの要因ですが、現在のウクライナ情勢も大きく関係していると考えられます。
金正恩氏は、核を持たないウクライナがロシアに攻め込まれている現状を見て、核兵器やミサイルを持つことの重要性を改めて痛感したとみられます。
さらに、核大国であるロシアに対し、欧米諸国が全面戦争を恐れ、強く出られない状況を見て、「核の抑止力の強さ」を改めて確信していることも考えられます。
現在、ウクライナ情勢をめぐって、日本・アメリカ・ヨーロッパとロシア・中国の間の溝が深まっていて、国連安保理もほとんど機能していない状況です。このタイミングなら、北朝鮮がミサイル開発を進めても、国際社会が一致団結して圧力をかけられないとの打算があることも考えられます。
◇
北朝鮮は今後、さらなるICBMの発射や核実験の再開など軍事行動を一層加速する可能性も指摘されています。北朝鮮の視線の先にあるアメリカがどう出るのか、その出方も注目されます。
(2022年3月25日放送「news every.」より)
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