“紀州のドン・ファン”殺害事件初公判 元妻「殺していない」無罪主張 検察は状況証拠で犯行を立証へ「ワード検索で『老人死亡』『殺す』『完全犯罪』『薬物』」と指摘
”紀州のドン・ファン”と呼ばれた資産家の男性を殺害した罪に問われている元妻の裁判員裁判が始まり、元妻は「殺していない」と無罪を主張しました。和歌山地裁から中継です。(取材・報告=澤井耀平記者)
逮捕から3年という異例の長さを経て始まった12日の裁判は予定通り、午前10時40分ごろに始まり、さきほど閉廷しました。
元妻の須藤早貴被告は、黒のワンピースにマスク姿で堂々とした様子で法廷に姿を見せると、検察側の話をメモを取りながらしっかりと聞いていました。
2018年、“紀州のドン・ファン”と呼ばれた野崎幸助さんを和歌山県田辺市の自宅で、何らかの方法で致死量を超える覚醒剤を摂取させ殺害したとされている須藤被告。
12日の初公判では「私は殺していませんし、覚醒剤を飲ませたこともありません」と起訴内容を否認し、無罪を主張しました。
目撃者などの直接的な証拠がない中で、検察は、状況証拠の積み重ねで犯行を立証する方針です。
まずは、須藤被告のスマートフォンに「完全犯罪」などの検索履歴があったと検察側が指摘した12日の裁判です。
◇◇◇◇
阿部頼我記者
「今、須藤被告を乗せたとみられる車が和歌山地裁に入りました」
当時の年の差は55歳。結婚から3か月で死亡した資産家の野崎幸助さんを、須藤早貴被告は殺害したのか。
逮捕から3年以上かかった注目の初公判。須藤被告は、長いストレートの髪にノースリーブの黒いワンピース姿で証言台に立ちました。
起訴状が読み上げられ大きくうなずいたあと…
須藤被告
「私は社長を殺していませんし、覚醒剤を飲ませたこともありません」
小さな声でしたが、はっきりとした口調で起訴内容を否認しました。
注目されるのは、目撃者などの直接証拠が乏しい中、検察側が須藤被告の犯行をどう立証するかです。
冒頭陳述で検察側はー
検察
「被告は財産目当てで結婚し、覚醒剤を使って完全犯罪を行った」
須藤被告は、事件の約半年前に野崎さんと知り合い、その頃から毎月100万円を受け取っていたと説明。知り合ってから2か月後に結婚しましたが、和歌山と東京を行き来する須藤被告に嫌気がさした野崎さんから離婚届を渡されたなど、犯行に至る経緯を主張しました。
検察側
「『トリカブト殺人事件』『妻に全財産を残したい場合の遺言書の文例』というウェブサイトを見たり、『完全犯罪』『薬物』『老人 死亡』『殺す』などのワード検索をしていた」
検察側
「密売サイトで、致死量の3倍以上にあたる少なくとも3グラム以上の覚醒剤を十数万円で購入。周到に犯行を計画していた」
さらに検察は「野崎さんが覚醒剤を口から飲み込んだ可能性がある時間帯に、被告は自宅で2人きりになっていた」など、十分な犯行機会があったと主張。野崎さんの死亡後も「自白剤」「殺人罪 時効」など、捜査に関する検索をしていたなどと指摘しました。
一方、弁護側は。
弁護側
「怪しいからやっているに違いない。もしそれで結論が出るなら裁判をやる意味はない」
「本当に須藤被告が覚醒剤を飲ませたと言えるのか」「飲ませたとしても殺そうと思っていなければ、殺人罪には問えない」などとして須藤被告の無罪を主張。裁判員らによびかけました。
事件の真相はどこまで明らかになるのか。判決は12月12日に言い渡される予定です。
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