”紀州のドン・ファン”殺害事件から6年 元妻の初公判 争点は「覚醒剤の摂取方法」専門家が解説
”紀州のドン・ファン”と呼ばれた資産家の男性が殺害された事件で、殺人の罪などに問われている元妻の裁判が12日から始まります。争点の一つは覚醒剤の摂取方法。専門家を取材すると、その難しさが見えてきました。
2018年、”紀州のドン・ファン”と呼ばれた資産家、野崎幸助さん(当時77)が和歌山県田辺市の自宅で死亡しているのが見つかりました。
死因は「急性覚醒剤中毒」。遺体からは致死量を超える覚醒剤の成分が検出され、警察は殺人の疑いで捜査を開始しました。
そして事件から3年後ー。
記者
「捜査員に囲まれて、元妻の女が降りてきました」
警察は状況証拠を積み重ね、元妻の須藤早貴被告が何らかの方法で覚醒剤を摂取させ殺害したとして逮捕しました。
これまで無言を貫いてきた須藤被告ですが、12日からの裁判で弁護側は無罪を主張する方針であることが新たに分かりました。
直接的な証拠のない中で、争点の一つとなるのが―。
『覚醒剤の摂取方法』
明らかになっていない覚醒剤の摂取方法について。
元大阪地検検事の亀井正貴弁護士は。
亀井弁護士
「飲ませ方について特定できない、しにくいという状況というのが、検察側にとっては一つのマイナスポイント。逆に弁護側としては“攻めポイント”がそこにあると言える」
警察は口から摂取させたとみていますが、薬物に詳しい専門家は、致死量の覚醒剤を隠して相手に飲ませる難しさを指摘します。
近畿大学薬学部の小竹武教授
「致死量はメタンフェタミン(覚醒剤)として2.5gを1回に摂取すると、確実に死に至るだろうという風に考えられます。(覚醒剤は)相当苦い。だまして飲ませられる物ではない。何らかの工夫をしなければいけないと思われます」
考えられるのが、食事や飲み物に混ぜた可能性です。
野崎さんが死亡直前にビールを飲んでいたことから、警察が空き瓶2000本を押収し、鑑定したものの、覚醒剤は検出されませんでした。
また、事件当日、野崎さんは鍋料理を食べていたとみられますが、小竹教授は食べ物に混ぜて食べさせることも難しいと指摘します。
小竹教授
「料理の量が多ければ、2.5gを入れてその料理を全部食べないといけないとなりますよね。そしたら途中で変な味がするということは明らかにわかりますので、料理を全部摂取するということはあり得ない」
また、カプセルなどに入れた可能性については。
澤井耀平記者
「こちら、市販されていた1番大きなカプセルになります。比べてみますと、1円玉より大きいです」
このカプセルの容量は0.5グラム。致死量の覚醒剤2.5グラムを摂取するには時間を空けず、これを5個飲む必要がありますがー。
澤井記者
「ひとつ飲み込んだんですが、かなりサイズが大きいので飲み込むのが、難しいです」
亀井弁護士
「検察と弁護側の争点の重要ポイントになると思います。 『事故かもしれない、自殺かもしれない』という弁護側の主張と、『他殺である』という検察側の主張がぶつかり合うところが、一つの論点かもしれない」
逮捕から3年が経過し、12日から始まる裁判員裁判。検察と弁護側、双方の主張が注目されています。
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