【漂流ポスト】今も届く”亡き人への手紙”…東日本大震災から11年 岩手・陸前高田市

【漂流ポスト】今も届く”亡き人への手紙”…東日本大震災から11年 岩手・陸前高田市

【漂流ポスト】今も届く”亡き人への手紙”…東日本大震災から11年 岩手・陸前高田市

東日本大震災からまもなく11年。岩手県陸前高田市には震災で亡くなった大切な人に宛てた手紙が届き続ける場所があります。悲しみと向き合いながら、時には心に閉じ込めた亡き人への思い。断ち切られた息子との何気ない日常会話を続ける手紙もありました。news every.の藤井キャスターが被災地を取材しました。

   ◇

藤井キャスター
「いやー結構高いですね。一本だけしか残らなかったことは、津波の強さを感じます」

藤井キャスターが訪れたのは、奇跡の一本松が立ち続ける岩手県陸前高田市。

時がたち、“復興の歩み”が進んでいます。

藤井キャスター
「小さな木が植えられてるんですね」

「時間がたてば、またこういった木がのびてきて、みんなの命を守ってくれるかもしれないですね、防潮堤とともに」

2011年3月11日、津波に奪われた多くの命。大切な人を突然失いました。

その思いを受け止める「ポスト」が、陸前高田の山奥にあります。亡くなった人への思いがつづられた手紙が届く“漂流ポスト”です。

赤川勇治さん(72)が、行き場のない悲しみを少しでも和らげてほしいと、漂流ポストを始めました。

漂流ポストを開設した赤川勇治さん(72)
「どん底の悲しみを味わった方たちが、どこへ気持ちを持って行ったらいいかわからないわけです」

「はき出し口がどこかにあったらいいだろうなと、たどり着いたのが手紙だった」

今も全国各地から届き続ける手紙。その数は1000通を超えました。届いた手紙は公開され、誰でも、書かれた思いに触れることができます。

赤川さん
「今でもまだ心を開けない方がいる。そういう方たちにこれを読んでいただくことによって、苦しいのは自分だけじゃないんだと」

今はいない大切な人へ贈られた数々の言葉。

藤井キャスター
「自分の思いを自分の筆で、ペンで、伝えたいんでしょうね」

「『思い返せば震災前、夜おふとんに来て、うでまくらとかしてくれたよね』と、自分のお兄ちゃんに書いた手紙があって。感触残ってるんでしょうね」

一文字一文字込められた、胸の内。それでも気持ちは前へ向かっています。

藤井キャスター
「でも、妹さんが『今は楽しいんだよ。ぜんぶが楽しいんだよ!いろいろあるけど充実してるよ!!いっぱい、いっぱい伝えたいありがとう。もっといっしょにいたかった』って、一歩前に進んでいますね」

毎年、漂流ポストに手紙を送り続けている人がいます。

赤川さん
「手紙というか、手紙を会話に変えている」

藤井キャスター
「会話ですね」

「『おかーさん誕生日だったのヨー。おめでと-!!と言ってくれるかな?聞こえないなぁ~。大きな声でもう一度…さんはい…』って書いてあって」

赤川さん
「目の前にトモ君をおいての会話なんです」

どのような思いで手紙を書いているのでしょうか。手紙の消印の宮城県南三陸町に向かいました。

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高野慶子さん(58)は、22歳の長男・智則さんを津波で失いました。

亡き息子に手紙を書く 高野慶子さん(58)
「すごく家族思い。すごく優しい子」

車好きで、自動車整備士として働いていた智則さん。あの日、高野さんが仕事先へ送り出したのを最後に帰らぬ人となりました。

高野さん
「なんでいないのかな。本当はうそなんじゃないか、死んだということが。あの津波さえなかったら生きてたんだよな」

誰にも話すことができなかった智則さんへの思い。胸にしまい込んだまま4年がたった時、漂流ポストに出会いました。

高野さん
「ここに手紙を書けば、トモに届く。すぐ書かなくちゃいけない気持ち」

1通目は、2015年3月11日。すがる思いで書きました。

「おーいトモ、元気かぁ?トモが空に行ってから4年。会いたいよ。声ききたいよ」

“空にいるトモに届くように”便箋は空色です。

高野さん
「書いている時はすごく楽しくて、出してこれで届いてるなって」

震災から10年がたった去年は――

「トモさん。10年記念で会いにきてはもらえないかな」

手紙を通して、22歳のままの智則さんと会話を交わしています。

藤井キャスターが、「トモさんは高野さんのお手紙をどう読んでると想像されてますか」と高野さんに尋ねると…。

高野さん
「またバカなこと書いてるって、それしかないと思うんです。やってるよまた、おっ母。へんちくりんな絵描きやがってとか」

「他の方が自分の子どものことをいろいろと話すように、私もトモの話をしたいんです。普通のお母さんなので。変わらず普通に、何かあったことを報告するし、本当に普通に変わらない。皆さんと同じような、どこにでもいる親子関係をずっと続けていきます」

区切りのない被災者や遺族の思いを、漂流ポストは受け止め続けます。

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藤井キャスターは取材を振り返り、次のように話します。

今でも漂流ポストには手紙が届いていて、特に3月11日が近づくと、さらに手紙が多くなるそうです。また、実際にポストのあるところまで来て、ポストをなでている人もいらっしゃるそうです。ポストを通じて、大切な人と会話をしていらっしゃるんだと思います。

今回、取材した高野さんも、思いを手紙に託して日々を過ごしていらっしゃいますが、実は、お話を聞くと「私も息子のことを話したい。でも周りの方が気をつかってくださって、なかなか話すことができなかった」と教えてくれました。話すことで生まれるエネルギーもあるのだと、トモさんとの思い出を話す柔らかな表情を見て、そう感じました。
(2022年3月7日放送『news every.』より)

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