ロシアに連れ去られるウクライナの子どもたち 経験した3兄妹語る“ジェノサイド”の実態【ウクライナ侵攻から1年】|TBS NEWS DIG

ロシアに連れ去られるウクライナの子どもたち 経験した3兄妹語る“ジェノサイド”の実態【ウクライナ侵攻から1年】|TBS NEWS DIG

ロシアに連れ去られるウクライナの子どもたち 経験した3兄妹語る“ジェノサイド”の実態【ウクライナ侵攻から1年】|TBS NEWS DIG

シリーズ「侵攻1年~遠い停戦」です。ウクライナの子どもたちがロシアに連れ去られるケースが数多く報告され、国際的にも非難の声が上がっています。当局からロシアの施設に連れて行かれ、奇跡的に親元に戻った3兄妹がJNNに一部始終を語りました。

ウクライナの首都キーウに到着した1台のワゴン車。降りて来たのは、ロシアに連れ去られ、一時行方不明になっていた子どもたちです。

彼らと同じく、ロシアに連れて行かれた子ども達に会うことができました。

今はバルト3国ラトビアに避難しているマトベイくん(12)とスビャトスラバちゃん(9)、アレクサンドラちゃん(7)の3人兄妹です。

ロシア軍が侵攻し、5月に制圧を表明したウクライナ南東部のマリウポリ。3人は市内にあるこの家に暮らしていましたが、攻撃でめちゃめちゃに壊され、4月には父親がロシア側に拘束されました。

引き離された子どもたちはバスに乗せられ、2つの施設を経て1か月半後、ドネツクに移されます。

そこには。

ロシアに連れ去られていた マトベイくん
「(自分たち含む)31人の子どもがいました。他の子がどこから来たのかは知りません」

その時に作られたとされる文書が残されています。

記者
「これは、マリウポリからロシアに連れて行かれた子どもたちのリストです」

ロシア側の“公式文書”には、リハビリの名目で子どもたちを一時的にロシアに送り、1か月以内にドネツクに戻すと記されています。

マトベイくん
「ドネツクで一晩過ごし、その後、空港に行くと言われました。いろんなことを経験したので、療養所で休む必要があると」

子どもたちは飛行機でロシア・モスクワ州に移され、この施設に連れて来られました。入り口は厳重な警備が施され、看板には「ロシア大統領府総務局子どもの医療センター」とあります。

紹介動画では、最新の設備を取り入れた子どものリハビリ施設と説明されています。

ロシア政府が公開した映像には、私たちが取材した兄妹の姿も。自転車をこぐのは次女のアレクサンドラちゃん。女性に抱きしめられているのは長女のスビャトスラバちゃんです。

そして、この中心に写る水色の服を着た女性は、プーチン大統領に子どもの権利担当に任命された女性高官。先週にはプーチン氏に呼ばれた時の映像も配信されました。

ロシア 子どもの権利担当全権代表
「最も重要なのは、子どもたちの未来の根幹を作ってあげることです」 

そこでの生活は。

ロシアに連れ去られていた スビャトスラバちゃん
「一日中スケジュールがあったよ」

施設では毎朝6時に起床。体操や勉強のほか、ゲームやダンスパーティの時間もあり、モスクワ市内に出かけたこともあったといいます。

スビャトスラバちゃん
「ある日講堂に全員集められ、プレゼントが配られました。私たちはゲームをもらいました。Nintendoです」

そして、ドネツクに戻る予定日が近づいた頃、職員が告げたのは。

マトベイくん
「砲撃が行われているので、ドネツクに連れ戻せないと言いだしました。養子になるか孤児院に行くかを決めなければならないと」

ロシアで養子になることを強く勧められたというのです。しかし、マトベイくんはロシア当局から解放された父親と携帯電話で連絡をとることができていました。

NGOの協力もあって、2か月半ぶりに再会を果たしました。

3人の父親 イェフヘンさん
「敷地内のそこかしこに監視カメラがあり、まるで“子どもの刑務所”でした」

マトベイくん
「階段でお父さんの声を聞いて走っていったんだ。幸せで涙が出ました」

子どもをロシアから連れ戻すために協力したボランティアグループにはロシア人も含まれていたと言いますが、今後の活動に支障が出るため、ルートや手段など、詳細は明らかにできないということです。

他の子どもたちは。

マトベイくん
「ほとんどが養子になりました」

ウクライナ政府によると、侵攻後ロシアに移された子どもは1万6000人以上にのぼり、マトベイくんたちのように親元に戻れたのは300人ほどに留まっています。

こうした子どもを連れ戻す活動をしている団体は、彼らが送られる施設で「ジェノサイドが起きている」と指摘します。

SaveUkraine代表
「多くの子どもが洗脳され、ウクライナ語を話すことも禁じられ、そしてウクライナ人であることを禁止されているのです」

戦禍での「保護」を名目に連れていかれる子どもたち。意思に反し、祖国や家族、そしてアイデンティティーが奪われていると懸念が高まっています。

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