北陸の老舗旅館で何が？ 助成金不正「タイムカード押すな」と指示｜TBS NEWS DIG

北陸の老舗旅館で何が？ 助成金不正「タイムカード押すな」と指示｜TBS NEWS DIG

27日に行われたある老舗高級旅館の運営会社の会見。社長が謝罪したんですが、実はオーナー会社が国の助成金を不正に受け取っていたことが、私たちの10か月にも及ぶ取材で発覚しました。「タイムカードを押すな」謎の指示の意味とは？

ある疑惑を追って、兵庫県芦屋市の高級住宅街に向かった。

記者
「金沢会長はいらっしゃいますか？」

しばらくして、家に招き入れられた。

妻
「ダメですよ、カメラはテレビで映るでしょ」

金沢氏
「ええがな！撮りいや、この格好でええなら」

金沢孝晃会長。石川県加賀市にある旅館「加賀百万石」のオーナー会社のトップだ。創業1907年の老舗で、かつて昭和天皇も宿泊したことのある、高級旅館。そこで、不正が行われているという情報が…。

「タイムカードを押させないような指示書が貼ってあった」

タイムカードを押させないのは、国の助成金を不正に受け取るためではないかという。

業績が悪化した会社が従業員を休ませた場合「休業手当」を出す必要がある。その一部を、国が助成する雇用調整助成金。だが、タイムカードを押させず「休んでいた」と偽って、実際には働いていた人の分まで申請していれば、それは不正にあたる。

Q.タイムカードを押さないようにと、どうしてそのような指示をしたか
金沢孝晃会長
「するわけがない、するわけがない」

Q.実際に働いていた人の分を申請したわけではない？
金沢孝晃会長
「当たり前でしょ、そんなこと。犯罪じゃないの、そんなことあったら」

ところが、そうした指示の証拠があるという人が現れた。元従業員のAさん。

元従業員Aさん
「これですね」

旅館のシフト表だ。従業員の名前の下に「タイムカード押印」という欄があり、そこにバツ印。すぐ上には「出勤」の「出」の文字が…。

元従業員Aさん
「×のところはタイムカードを押さない。この日ならタイムカードを押さない人が、1人2人3人…」

その「シフト表」を金沢会長に見せると…。

金沢孝晃会長
「タイムカードを打っていないということ？こんなものを見たら、絶対にアカンと言うわな、何をしとるんやと。俺はこれで引退せなあかんなと、今思った」

シフト表を初めて見たという会長は、その場でシフトを作った井上取締役に電話をかけた。

金沢氏
「もしもし」

井上氏
「おはようございます。すみません、お電話いただいたみたいで」

金沢氏
「これは『（従業員自ら）ボランティアで出るわ』と言うから、そう作ったということ？」

井上氏
「そうです。もしあれやったら、手伝いに来てという程度の話」

金沢氏
「井上が『出てこい』と言っていないということ？」

井上氏
「そうですね、言っていません」

タイムカードの欄がバツの従業員は仕事ではなく、あくまでも「ボランティア」だと主張した。自宅には社内調査を行ったという社員たちが報告に来た。

金沢氏
「全く不正はないということ？」

社員
「不正はないです」

金沢氏
「証拠もみな出せるんやな」

社員
「出せます」

金沢氏
「よかったなそれは、俺も引退せずに済むわ」

社員
「そんなことは絶対にないです」

ところが、私たちはさらに、決定的な資料を入手した。「給与明細一覧表」。一般の従業員は見ることのない、アルバイトを含めた全従業員の給与明細だ。見せてくれたのは元従業員のBさんだ。

元従業員Bさん
「これ私なんですけど、2021年6月の（給与明細）。（Q.給料が全部…）休業手当になっていますよね。（Q.基本給が0になっていますね）そうですね」

20数万円の休業手当が支払われたとなっている。だが…

元従業員Bさん
「（Q.その月も全部ずっと普通に働いているわけですよね）ずっと通常出勤です。ひたすら通常出勤。（Q.休業した覚えはない？）休業した覚えはないですね。タイムカードを押さずに通常出勤しています」

働いていたのに、休業手当…

元従業員Bさん
「確実に不正ですよね、これは。国を騙して自分たちの肥やしにしているのは絶対に許されないと思う」

再び金沢会長の自宅に向かった。すると、妻である昌代専務が対応するという。

Q.お見せしたシフト表ありますよね、出勤に○がついていて、タイムカードが×の人は、会社としては休めという指示だったのか
金沢昌代専務
「現場に確認したら、出てきた時もあったというのは聞いています」

Q.そうするとそれは･･･
金沢昌代専務
「出勤にしないとだめですよね」

Q.助成金の申請に入ってしまっている
金沢昌代専務
「ですね」

Q.そこはまずかった
金沢昌代専務
「そうですよ、把握できてなかったですからね」

ついに、働いていた人の分まで助成金を申請していたことを認めた。

コロナ禍で申請手続きが簡略化され、雇用調整助成金の支給額は全国で6兆円を超えた。一方で不正も相次ぎ、取り消された助成金は135億円にのぼっている。

金沢氏は、オーナー会社の代表取締役を辞任した。だが、不正は担当者が勝手に行ったものだとして、上層部の関与は否定した。

運営会社の社長も交代し…（https://newsdig.tbs.co.jp/list/article?id=jnn-20221028-6048341）

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